大阪桐蔭投手陣を支える正捕手の思考 小泉航平が常に危機感を持たせる理由
福井前主将に学んだ捕手の姿勢
明るいキャラクターでチームのムードメーカーとしても活躍する小泉。最後の夏は「投手ファースト」でチームを勝利に導く 【写真は共同】
「福井さんにはキャッチングや配球のことはもちろん、捕手としての姿勢について隣で勉強させてもらいました。寮でも福井さんの話を聞いて、一緒にお風呂に浸かってアドバイスを聞いたこともありました。自分は1年の頃は、抑えられなかったり自分が構えたところにボールが来なかったらイライラすることがありました。でも、それではダメ。キャッチャーはまずは信頼されるようにならないといけない。その点、福井さんは周りに対して聞く耳をちゃんと持って、自分が自分がという振る舞いはしていませんでした。レギュラーを掴む競争をする以上は、どんどん自分を出すことも必要だけれど、キャッチャーは自分を出すのが全てではないポジション。自分はもともと我が我がというタイプではないですけれど、それぞれのピッチャーの特性を一番知っておくこと。何かあれば常に声を掛けること。それと、どの投手にも公平に接するようにしています」
自分がどれだけ冷静になれるか
「プラスな言葉を掛けて乗せていくことも大事なんですけれど、試合前から打たれるイメージばかりを考えて最悪の状況を考えていた方が、いざその状況になった時に冷静でいられるんです。ピッチャーが慌てた時でも自分がどれだけ冷静にさせることができるかも自分の役目だと思っています」
昨夏の大阪大会決勝の大冠戦で、大量リードを奪いながら終盤の相手の驚異的な追い上げに遭った。夏の大会独特の球場の雰囲気、1球ごとに変わる流れ。同時に1球の怖さも学んだ。9回の大冠の攻撃について、福井が「何を投げさせたらいいか分からなかった」と言っていたことも胸に置いている。“あの冷静な福井さんでもそんな心境になるんだ”と。
だからこそ、夏は投手の一番投げやすい環境を作ってあげたいと心から思う。取材でグラウンドに訪れると、いつも笑顔で挨拶してくれる礼儀正しさと、ムードメーカーでもある小泉のキャラクターが、うまくチームに浸透している。「投手ファースト」の背番号2の挑戦は、いよいよ最終ラウンドを迎える。