4強の争いで山縣亮太が見せた集中力 5年ぶりの優勝でいざアジア最速の戦いへ

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5年ぶり2度目、山縣が男子100で優勝

男子100メートルを制した山縣(中央)。ケンブリッジ(左)、桐生ら精鋭がそろう中で頂点に立った 【岡本範和】

 陸上の日本選手権第2日が23日、山口・維新みらいふスタジアムで行われ、この日の最終種目となった男子100メートル決勝(追い風0.6メートル)では、山縣亮太(セイコー)が10秒05で優勝。5年ぶり2度目となる“日本最速”の称号を得ることになった。2位はケンブリッジ飛鳥(Nike)で10秒14、3位は桐生祥秀(日本生命)で10秒16。また、昨年の世界選手権ロンドン大会で男子4×100メートルリレーの銅メダルメンバーだった多田修平(関西学院大)は10秒22の5位だった。

 この日は梅雨前線の影響で雨の予報もあったが、レースが始まった20時36分には雲の切れ間も見え始め、昨年のレースのように雨に降られる心配はなくなった。ただこの日のトラックレースのタイムは、全体的に低調。記録を期待できる環境でないことは明白で、関係者の中では“9秒台”への期待はやや薄れている状況だった。

 それでも選手自身にとって大事なのは「ナンバーワン」になること。桐生は前日会見で「決勝は勝負だと思っている」と話し、山縣も「しばらく優勝できていないので、しっかり優勝を目指したい」と意気込み。多田も「日本選手権の優勝を目指して、アジア大会の代表になれるように頑張りたい」、ケンブリッジは「タイムよりも日本選手権に勝つことが大事。勝てばタイムも付いてくるので、勝ちたい」と、優勝への気持ちをそれぞれ言葉にしていた。

準決勝ではスタートに課題を残していた

準決勝はしっくりこなかった様子の山縣。レース後の分析で、決勝へ向けての課題を整理した 【岡本範和】

 優勝した山縣はレースをこう振り返る。

「すごく自分のレーン、自分のコース、自分の走りそのものに集中できていた。ほかの選手の出方を気にすることもなく集中できていたので、一歩一歩スムーズに足が進んだかなと思います」

 山縣は今シーズンの序盤、昨年9月の全日本実業団で日本2位タイとなる10秒00をマークした走りの感覚を忘れないことが冬のテーマの1つだったと話していた。その中でも「中盤の加速力」にポイントを置いていた。ただ、今季はレースを重ねるたびに今度は自身が得意としていた「スタートの切れ」に課題が出ていた。大会の前日会見でも、「スタートの感覚が今年はあまり良くなかったので、その技術的な確認と、そこから中盤の加速のつなぎの部分をスムーズにつなげられるようにと確認しました」と話しており、ここまで約3カ月間の間で走りの修正点が少しずつ変わってきており、それを調整する繰り返しだった。

 22日の準決勝の後も、10秒19(向かい風0.3メートル)で組1位で決勝進出を決めながらも、どこか顔つきはさえず。「予選のスタートであまり出られなかったので少し修正をかけたつもりだったのですが……。中盤以降の加速にスムーズにつなげていくイメージだったのですが、イマイチかなという感じ」と首を傾げている。

 迷いさえ見えた山縣だったが、準決勝終了後には自分の映像を見て振り返り、自身の走りの感覚を分析。そして、出した答えが「集中力」だったという。
「とにかく自分のレースに集中しようと。やれることだけやって、結果的に勝てればいいし、負けたとしても、それはそれで自分の力がなかっただけと思おうという気持ちでした」

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