NBAに「王朝」を築いたウォリアーズ 4年連続の同一カードは予想通りの結末に

杉浦大介

ウォリアーズの勝利を疑った者はいなかった

ファイナルで激しくマッチアップしたレブロン(左)とデュラント(右) 【写真は共同】

 これほどのいわゆるスーパーチームが生まれたがゆえ、“競い合い”という意味では今年のファイナルは物足りなかったことは記しておきたい。

 前述の通り、ウォリアーズとキャブズは4年連続で最終決戦で激突してきたが、ここ2年はウォリアーズが合計8勝1敗と圧倒。今年のファイナル前には『ESPN.com』のプレビューでも全24記者がウォリアーズを勝者に選び、うち16人が5戦以内の短期シリーズになると予想していた。筆者の周囲にもキャブズが勝つと考えた関係者は皆無で、実際にその通りの結果になった。

 第1戦と第3戦では、キャブズにも勝機があった。特にJR・スミスが第4クォーター終盤に得点を間違えるという大失策を犯した初戦は、本来ならばウォリアーズが敗れるべきゲームだった。ただ、ここでキャブズが先勝していたとしても、最終的なシリーズの結末は同じだったはずだ。

「結局のところ、私たちはより多くのタレントを擁している。このリーグではそういったチームが勝つものなんだ」

 ウォリアーズのスティーブ・カーHCのそんな言葉は、NBAの真理を示している。それを理解していたのは指揮官だけではなく、選手たちも自身が断然優位である事実にもちろん気付いていたに違いない。

 今シリーズ中のウォリアーズの主力メンバーはアンセルフィッシュ(献身的)ではあったが、一方で緊張感に欠けるプレーも散見した。レギュラーシーズン中から王者を追いかけたあるメディアは、「シーズン中は見ている者にフラストレーションを感じさせるゲームはもっと多かった」と証言していた。多少気を抜いても、第3クォーター頃からギアを上げれば、大抵のゲームに勝ててしまう。

 第5戦終了時で2勝3敗と追い込まれたヒューストン・ロケッツとのウェスタン・カンファレンス・ファイナルにしても、崖っぷちという印象は最後までなかった。そこまで飛び抜けたチームが存在することで、過去2年のNBAからはスリルとドラマが少なからず取り除かれてしまったことは否定できない。

それでも18年のファイナルを忘れるべきではない

デュラントは史上6人目となる2年連続ファイナルMVPに輝いた 【Getty Images】

 ただ……ファイナルが盛り上がりに欠けたのは残念でも、同世代に歴史的チームが生まれたことを、やはりポジティブに捉えるべきではあるのだろう。過去4シーズンは平均66勝。現代のウォリアーズの強さは語り継がれ、書き留められ、時を超えていく。私たちはそれほどのチームをリアルタイムで目撃している。

「(レガシーに関する質問は)僕が答えるべきじゃない。僕に言えるのは、自分たちが成し遂げたことは本当に意義深く、多くの選手が経験できるものではないということ。僕たちは3度にわたって王座に就いた。その位置付けに関する議論は後でやればいい。今はただ、できる限り続けていきたいんだ」

 カリーはそう述べたが、盛者必衰のことわり通り、ベイエリアの栄華が永遠に続くわけではない。新陳代謝の激しい米スポーツ界で“ダイナスティ(王朝)”と呼ばれるようになったとき、そのチームは往々にして下り坂を迎えているもの。ウォリアーズも、その点では例外ではないのかもしれない。だとすれば、いや、だからこそ、18年のファイナルを忘れるべきではない。

 稀有(けう)なタレントをそろえたウォリアーズは、現役最強プレーヤーが率いるチームを蹴散らし、極めて明白な形で再び頂点に立った。今後、私たちはウォリアーズの歴史的位置付けを議論し続ける。彼らのことが好きでも嫌いでも、今から数10年が過ぎた頃には、われらの世代のベストチームのことを、後の人々に自慢げに話しているに違いないのだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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