雨も運も味方、ジュール遅咲きのVM勝利 出走馬決定賞金順・最下位からの大逆転

スポーツナビ

雨の量も「ちょうど良かった」

「歯車が噛み合った」と殊勲の騎乗を見せた幸 【写真は共同】

 脚元の不安が解消され、体質が強化されたことも大きかっただろうが、同じくらいに“運”も味方した勝利だったと、幸は語る。と言うのも、今年のヴィクトリアマイルに登録した馬のうち、ジュールポレールは今年初戦となったGII阪神牝馬Sで賞金を加算できなかったために、出走馬決定賞金順が最下位だった。幸いにも登録馬がフルゲートぴったりの18頭だったために除外とならなかったわけだが、もしジュールポレールより賞金を持っていた馬が1頭、2頭登録していたら、そもそもゲートインすらできなかった可能性もあったのだ。

「そこが一番、大きかったですね」と幸は強調し、また、雨の量も「これくらいでちょうど良かった。降り過ぎても良くなかったでしょうし、パンパンの良馬場だったらこの馬よりもっと切れる馬がいたかもしれないですから」とも振り返っていた。GIを取れる素質に身体能力がようやく追いつき、運もこれ以上なく味方した。ジョッキーの言葉どおり「歯車」が寸分の狂いなく噛み合った、まさに“運命の勝利”と言えるかもしれない。

 今後については馬の様子を見ながらとなり、目標は未定だが、5歳ながらキャリアはまだ14戦。大事に使われてきた分、伸びしろはまだまだ残しているだろう。「大きい仕事をしてくれると期待していた馬。ようやく兄の域に来たと思いますし、これからも大きなレースに挑んでいきたい」と西園調教師。一方の幸も「GIを取ったことで今度は追われる立場になると思いますが、また大きいところを取れる馬。これからも活躍してほしいですね」と、GI・2勝目、3勝目へ期待を高めている。混戦の牝馬戦線を一歩抜け出す、遅咲きのニューヒロイン誕生となるか。

またも2着リスグラシュー、武豊「外枠が」

またしても惜敗したリスグラシューと武豊 【スポーツナビ】

 一方、またしても2着に泣いたリスグラシューと武豊。上がり3ハロンはただ1頭、33秒台を突き抜ける32秒9の鬼脚で急襲したが、あと1完歩が届かなかった。

「惜しかったですね。あそこまで行ったら勝ちたかったけど、外枠だったのでどうしてもポジションが……。枠の内、外の差があったかな」と武豊。

 これで2歳時の阪神JFから通算4度目のGIレース銀メダル。ジュールポレールとは対照的に、こちらは今回も“運”がほんの少し足りなかったか。馬の状態次第では安田記念出走も視野に入れているとのことだけに、同じ府中マイルで今度こそ、牡馬相手でもうっぷんを晴らす快走を見せてほしいものだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント