チームを救った豊川雄太が見据える先 一発屋から「ストライカー」になるために

中田徹

3G1Aの活躍でチームを残留に導く

最終戦で3G1Aを決め、奇跡の1部残留の立役者になった豊川 【写真は共同】

 残り1試合となったベルギーリーグは第29節を終えた時点で、15位のメヘレンと最下位のオイペンが勝ち点24で並んでいた。両チームは、1部残留をかけて得失点差の際どい戦いをしていた。

 3月11日(以下、現地時間)の最終節、ベフェレンは57分、ハッサン・バンデのゴールで2−0とリードしていた。一方、オイペンはムスクロン相手にゴールを奪えず、0−0。このままでは、オイペンの降格が決まってしまう。

 クロード・マケレレ監督は57分、豊川雄太をピッチに投入した。そこから、奇跡が起こる。

 73分、ルイス・ガルシアのFKを豊川がヘッドで合わせて1−0。
 76分、豊川のパスからルイス・ガルシアがシュートを決めて2−0。
 80分、ルイス・ガルシアのCKを、豊川が再びヘッドで決めて3−0。
 89分、ゴール前で相手DFがボール処理にもたついたところを、豊川が突いて4−0。

 全試合を終え、勝ち点27で並んだオイペン(得失点差−17)とメヘレン(同−18)の残留争いは、鼻の差の勝負でオイペンに凱歌(がいか)が上がった。そして、途中出場で3ゴール1アシストを記録した豊川はオイペンの現人神(あらひとがみ)となった。

「限度を超えた」喜びに、実感が湧かず

残留を決めた後、豊川は度を越えた喜びに、しばらく実感が湧かなかったという 【写真は共同】

「俺らの方が早く試合が終わっていて、メヘレンの結果を待っていたんです。『た、頼む』、その気持ちだけでした。それから残留が決まって、おっちゃんからめっちゃキスされて、気付けば胴上げされているし、肩車もされた。オイペンの町でも、ウワーっと旗を回していて、すごかったです。

 町を歩いていると、すれ違う車がほぼクラクションを鳴らしてきて、うるさい(笑)。おじいちゃん、おばあちゃんから小さな子どもまで『ユータ! ユータ!』と言ってくれて、全員自分のことを知ってくれていました。良かったです」

 豊川本人は、しばらく実感が湧かなかったのだという。というのも「周りが盛り上がりすぎていて、限度を超えちゃっていたから」。

「今まで、この感覚は俺にはなかった。だから、表現しにくいんです。たとえば五輪の予選で自分が点を取って勝ったときも『めっちゃうれしい』って、ブワーってなったんですよ。でも、今回はそれとは違う喜びだった。俺はオイペンを1部リーグに残留させるミッションのために来て、点を取って達成した。それは、もちろん自分1人の力じゃないんですけれど、あまりに出来すぎて、どう表現していいのか分からないんです。この後、俺、事故に遭うんじゃないか。死ぬんじゃないかな、と思うくらい。それぐらいの運を使い果たした感じがあって、ちょっと表現できない」

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著者プロフィール

中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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