ロッテ期待の星・安田尚憲が歩む日々
「球界を代表する選手」への土台作り

ひたむきに野球と向き合う19歳

将来の活躍を目指して、今は2軍でじっくりと土台作りを進める安田
将来の活躍を目指して、今は2軍でじっくりと土台作りを進める安田【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 プロ野球選手になったのだと実感したのは、春季キャンプで同じ三塁手の鈴木大地の後をついて行動したときのことだった。


「大地さんに『(プロ野球選手は)ファンがあってのことなんだよ』と言われました。実際に大地さんは練習後にサインを書いていたり、自分にもやるように勧めてくれたりしたので、ファンの方に見られるのがプロ野球選手であって、それに応えるのは当然のことなんだなと心に響きました」


 マリーンズのユニホームに袖を通して、応援してくれる人の数は格段に増えた。安田尚憲が見る景色は少しずつ変わっていった。


 その素顔は、とにかく素直でひたむきだ。


 2軍本拠地のロッテ浦和球場敷地内にあるウエイトトレーニング場は、デーゲーム終了後になると、体力強化に励む多数の選手で活気づく。各自のペースで必要なメニューをこなす選手たちの傍らで、安田は若手対象の強化プログラムに参加している。自分の名前が書かれたファイルには何種類もの項目が並び、ストレングストレーナーの指導で丁寧に取り組む。


 その場に流れるBGMは、午後6時になると1軍の試合中継に切り替わる。実況アナウンサーの声に呼び寄せられるように、選手たちはネット中継の映るパソコン画面の前に立つ。先輩に混ざり、安田もトレーニングのインターバルになると試合中継を見つめた。「どんな戦い方をしているのか、もし自分が今呼ばれたらどんなことができるかを考えながら見ています」と、普段から可能な限り1軍の試合を見ている。6歳年上で同期入団の藤岡裕大と菅野剛士は、開幕スタメンを勝ち取りZOZOマリンスタジアムでヒーローインタビューを経験した。


「大先輩なので同期と言うのは恐れ多いですけど、新人合同自主トレから優しくしてもらっていたので、(活躍する姿は)純粋にうれしいです」と話す。それは紛れもない本音のようだ。この日は京セラドーム大阪での試合だった。遠く離れた1軍の舞台で、画面越しの藤岡裕が送りバントを成功させると、安田は小さく拍手をした。


 大粒の汗をかいてトレーニングを終える頃、たくさんいた先輩は誰もいなくなっていた。1軍の試合中継が映る画面は別の試合に切り替わる。安田は数時間前のデーゲームの自分の打席映像を見つめた。何度も再生ボタンを押しては、時折首を傾げる。静寂はしばらく続き、やがて、風を切る重厚な音が繰り返される。画面の中の背番号「5」は太陽が照りつけるグラウンドにいるが、バットを手に素振りを始めた安田の後ろの窓の外は、すっかり暗くなっていた。

プロ入り前から会得していた基礎知識

試合後には熱心に自身のバッティングを振り返る
試合後には熱心に自身のバッティングを振り返る【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 新人合同自主トレから指導にあたる菊地大祐2軍ストレングストレーナーは、「高校生としては筋量がありますが、まだまだ伸びしろもあります。目標は、マリーンズの中で優れているということではなく、球界全体で見たときに頭一つ抜ける体づくり。まじめに取り組んでいますし、今年中にはある程度のものができて、2〜3年かけて外国人選手クラスの体がつくれると思いますよ」と目標設定を語る。一流のフィジカルを手に入れるため、数年先を見越した土台作りは着々と進んでいる。


 また、体づくりに必要不可欠なのは栄養管理だ。球団の管理栄養士は「とても優秀で、何も言うことがないです」と断言する。1月の新人合同自主トレでの栄養学講座も「彼にとっては復習の意味合いだったと思います」と言うほどに、安田はプロ入り前の時点で基礎知識を会得していた。本人も「食事に関しては両親の影響と、高校の野球部でも勉強会がありました。まだまだですけど、ずっとやっていることなので(知識は)少しはあるつもりです」と自負している。


 それを裏付けるのが食事評価表だ。退寮後に自己管理できるかはプロ生活そのものを左右するため、マリーンズ寮では栄養士による個別指導を定期的に行っている。バイキング形式の食堂で選んだ朝昼晩それぞれの食事内容を提示し、実際の栄養価を示しながら食材選びの助言が行われる。誰しも改善を重ねて学ぶのが常であるが、安田に対する評価は3食ともパーフェクトに近い肯定的な言葉が並ぶ。栄養士からの助言は修正点ではなく、プラスアルファの提案だ。バリエーション豊かで的確な食材を選択し、好き嫌いも当然ない。開幕前に少し体重が落ちた時期についても「オープン戦の試合日に昼食の量が減ったのが原因でした」と自己分析する。補食も含めて1日5000キロカロリー以上を摂取する生活を送るが、「あれぐらい食べないとお腹が減ってしまうんです」と笑って話すほど、本人にとっては日常的なことなのだ。


 高卒新人らしからぬ安田の体格に驚く人は多いだろう。しかし、“恵まれた体格”という一言に収めるのは少し窮屈かもしれない。必要な知識を取り入れ、怠らずに継続してきた事実がある。プロ野球選手を夢見る青年が、地道に築き上げたものだった。

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