開幕第４戦では先発として勝利投手になり、本拠地デビュー戦ではメジャーリーグ（ＭＬＢ）初本塁打を放ち、二刀流の道を順調に歩み始めた大谷翔平。今回はその大谷と同じ１９９４年生まれの、ＭＬＢの「大谷世代」の注目選手を紹介しよう。なお、日本で「○○世代」と言うと同じ学年でひとくくりにされるが、米国では年度の区切り方が違うため、ここではあくまでも「９４年生まれ」に限定する。

　昨年までにＭＬＢでプレーした９４年生まれは計６６人いるが、そのうちオールスターに選ばれたことのある選手は４人しかいない。その中でも唯一、２度の出場経験を持つのが、前田健太の所属するドジャースの遊撃手、コリー・シーガーだ。

　ノースカロライナ州の高校から、２０１２年のドラフト１巡目指名でドジャースに入団したシーガーは、１５年のセプテンバー・コールアップ（出場選手登録枠が拡大される９月にメジャー昇格すること）で、２１歳にしてＭＬＢデビュー。翌１６年は開幕から正遊撃手としてプレーすると、７歳上の兄カイル（マリナーズ、１４年オールスター出場）に続いて、兄弟で球宴の舞台に立った。

　いたずらに大振りはせずに、左打席から広角にライナー性の打球を打ち分けるバッティングで、この年は打率３割８厘、２６本塁打、７２打点の成績で満票のナ・リーグ新人王を受賞。遊撃手部門のシルバースラッガー賞も獲得した。この１６年は兄のカイルも３０本塁打を打っており、同じ年に兄弟そろって２５本塁打以上というのは史上初の快挙だった。

　昨年は脚の張りやヒジ痛に悩まされながらも故障者リスト入りすることなく、２年連続の球宴出場＆シルバースラッガー賞受賞。初のゴールドグラブ賞はならなかったが、守備面での成長も著しく、順調にスター街道を歩んでいる。

　昨年は初出場のワールドシリーズでホームランも打っているが、そのシーガーを擁するドジャースを破って王者になったアストロズの遊撃手、カルロス・コレアも同じ「大谷世代」だ。

　コレアはプエルトリコの野球アカデミーから、シーガーと同じ１２年のドラフトで１巡目（全体１位）指名を受けて、アストロズに入団。ＭＬＢのドラフトは下位球団から順番に指名する「完全ウェーバー方式」だが、プエルトリコ出身の選手がいの一番に指名されるのは、これが初めてのことだった。

　その大きな期待に、シーガーと同じ身長１９３センチの大型遊撃手は、見事に応えてみせた。１５年の６月にメジャーデビューすると、打率２割７分９厘、２２本塁打、１４盗塁で、プエルトリコ出身選手では史上６人目の新人王を受賞。２年目の１６年も２０本塁打、９６打点をマークした。

　１７年はプエルトリコ代表の三塁手として出場したワールド・ベースボール・クラシックでベストナインに相当する「オールクラシック・チーム」に選ばれ、シーズンに入ると遊撃手部門のファン投票１位で初のオールスター出場。ケガで２カ月近く戦列を離れながらも自己最多の２４本塁打を放ち、ポストシーズンではリーグチャンピオンシップＭＶＰに輝くなど、アストロズのワールドシリーズ制覇に貢献。“世界一”直後のフィールド上で恋人にプロポーズをして見事にＯＫの返事をもらい、歓喜に大きな花を添えた。

　シーガー、コレアに加え、もう１人忘れてはならない遊撃手が「大谷世代」にいる。一昨年のワールドシリーズで、実に１０８年ぶりの王者となったカブスのアディソン・ラッセルだ。

　フィリピン系の母を持つラッセルも、もともとは１２年のドラフト１巡目でアスレチックスに入団した逸材で、１４年夏のトレードでカブスに移籍。シーガー、コレアよりも早く１５年４月にデビューすると、この年から正遊撃手に定着した。
　
　翌１６年はカブス旋風に乗ってファン投票で初の球宴出場を果たし、後半戦は主に５番を打つなど、シーズン通算で２１本塁打、９５打点（リーグ１１位）を記録。初出場のワールドシリーズでは、満塁本塁打も放った。

　そのラッセルの粋な計らいが話題となったのは、１７年９月２５日のカージナルス戦でのこと。この試合でファウルボールを追いかけてスタンドに飛び込んだ際、そばにいたファンがナチョスをグラウンドにぶちまけてしまった。するとその後、攻守交替の合間にラッセルが新しいナチョスを持ってそのファンのもとを訪れ、それを手渡しただけでなく、その場で記念撮影にも応じたのだ。この一件は「これぞ神対応」として、ニュースなどでも取り上げられた。