18年Jリーグ、移籍市場のトレンドは? 代理人・田邊伸明氏インタビュー<前編>

宇都宮徹壱

2018年シーズンのJリーグの移籍市場のトレンドについて、田邊氏に話を聞いた 【宇都宮徹壱】

「実はさっきまでカメルーン人の代理人と会っていました(笑)」

 都内にあるホテルのカフェでインタビューを始める際、株式会社ジェブエンターテイメントの代表、田邊伸明氏はそう語ってニヤリと微笑んだ。日本屈指の敏腕エージェントは、相変わらずグローバルかつ多忙だ。ようやく取材のアポイントが取れたので、今季のJリーグの移籍市場のトレンドについて、さっそく田邊氏に語っていただこうと思う。

 実は『スポーツナビ』では、昨年も田邊氏に同様のテーマでインタビュー取材をしている。ただしフットボールの世界の移籍市場は、さまざまな外的要因に左右されながら、目まぐるしく変容していくのが実情だ。今年2018年で言えば、DAZNマネーの分配、そしてワールドカップ(W杯)イヤーが大きな要因として考えられる。

 田邊氏の話は多岐にわたっているため、前後編の2回に分けてお送りする。前編となる今回は、DAZNマネーがJクラブに与える影響と各クラブの補強の傾向、そして日本人選手の海外移籍が低年齢化している背景について語っていただいた。Jリーグファンにとっても、日本代表ファンにとっても、いずれも興味深い内容となっていると自負する。(取材日:2018年2月7日)

「川崎はお金の使い道を決めていなかった」

昨シーズン終盤に鹿島を逆転し、J1優勝を果たした川崎フロンターレ。そのため、お金の使い道をあまり決めていなかったのではと田邊氏は語る 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

──今季の移籍について考える時、やはりDAZNマネーの影響というものは避けて通れないと思います。まずはこの話題からいきましょうか。

 DAZNマネーについては、メディアとして一度整理したほうがいいと思います。というのも「川崎フロンターレは(優勝して)22億円稼いだ」と発言している人が普通にいますから(笑)。もう1つ、DAZNマネーで誤解されているのは「優勝賞金が22億円ではない」ということ。賞金以外にも、均等配分金や理念強化配分金といった種類があって、一番ボリュームがあるのが「理想強化配分金」。これが3年間で15億5000万円です。

──1年目が10億円、2年目が4億円、3年目が1億5000万円ですね。

 そうです。以上を踏まえて考えた時、川崎はお金の使い道をあまり決めていなかった。というか、リーグ戦の半ばぐらいでぶっちぎりの1位になっていたら、お金の使い方について、いろいろと準備していたと思うんです。でも昨シーズンは、最後の最後で川崎がひっくり返すという展開でしたよね。そもそも(在籍している)外国人選手は基本的に複数年契約で、みんなそれなりに活躍しているから取り替える必要はない。(大久保)嘉人が戻ってくることも、優勝しようがしまいが決まっていた。優勝して移籍が決まったのは、齋藤学くらいですよ。

──なるほど。その川崎に追い抜かれた、鹿島アントラーズについてはどうでしょう?

 鹿島は16年に優勝していますけれど、あの時は2ステージ制で1シーズンにならすと(年間勝ち点では)3位でした。そこを厳粛に受け止めて、強力な外国人選手を3人(レオ・シルバ、ペドロ・ジュニオール、レアンドロ)獲得しましたが、優勝できなかった。とはいえ彼らは、最終節のギリギリのところまで優勝争いをしていたわけで、実質的に狙いは達成できていたと思います。だからこそ、鹿島はすごいなと思うわけです。

──今季も鹿島はきっちり補強していますよね。DFだけでも安西幸輝、犬飼智也、そして内田篤人。

 特に守備に関して、新陳代謝を図ろうとしている意図が感じられます。逆に川崎は、どうでしょうね……。大久保が戻ってきたことが、果たして吉と出るか。前線でのポジションの変更があるわけで、大久保の使い方が明暗を分けると思いますね。

今年は選手よりも監督が動いた年

G大阪のクルピ、札幌のペトロヴィッチ(写真)ら今シーズンは監督が動いた 【写真:フォトレイド/アフロ】

──昨シーズン、鹿島と同じくらい積極的な補強をしていたのが、サガン鳥栖とFC東京でした。

 残念ながら、どちらも結果に結びつく補強ではなかったですよね。鹿島と比べて、チームとしての積み重ねのある・なしがはっきり出ましたよね。去年が派手だった分、今季のFC東京の新加入選手は大森(晃太郎)とかディエゴ・オリベイラとか、そのくらいですよね。長谷川健太監督を引っ張ってきて、そこにお金を使ったというのもあるんでしょうけれど。

──昨シーズンは、優勝経験のある監督が解任されたり、あるいは任期満了となったり。今年は選手よりも、監督人事のほうが注目されていますよね。

 確かに。去年はどちらかというと、大きなお金の動く選手の移籍があった年で、今年は監督が動きましたね。ガンバ(大阪)にしても、目立った補強をしているわけではないけれど、レヴィー・クルピを監督に連れてきたのは大きいですよね。(北海道コンサドーレ)札幌も、ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)の監督就任が話題になっているけれど、あそこは地味ながら積極的な補強をしている印象です。

──そのミシャを解任した浦和レッズは、監督代行からスライドした堀孝史監督のままで今季を迎えることになりました。

 これは浦和を揶揄(やゆ)するわけではないのですが、たとえばシーズン途中に就任した監督が、残留なり昇格なりを果たして、そのまま来季も監督を続けるパターンがあるじゃないですか。これはかなりの確率で失敗します。日本人のメンタリティーなのかもしれませんが、残留あるいは昇格したから「感謝の気持ちを込めて次もお願いします」ではなくて、残留や昇格を果たしたからこそ、次の監督のことを真剣に考えないといけないわけですよ。それ(契約更新)をしなかったのが、去年のセレッソ大阪であり(大熊清監督→ユン・ジョンファン監督)、今年の清水エスパルスですよね(小林伸二監督→ヤン・ヨンソン監督)。

──なるほど。ちなみに今年の浦和はどう見ていますか?

 監督が代わって、3バックから4バックになっての初めてのシーズンですよね。しかも開幕直前でラファエル・シルバを引き抜かれてしまった。どっちに転ぶか、ちょっと見えないです。間違いなく言えるのは「堅い」ということ。川崎との練習試合を見ましたけれど、すでにチームが出来上がっていますよね。始動が早かったというのもありますが。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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