平昌で8年ぶり金メダルの新田佳浩 「うれしさより……」好敵手へ思い馳せ涙
クロスカントリースキー10キロクラシカル立位で金メダルを獲得した新田佳浩 【写真は共同】
新田は、すでに14日のクラシカルスプリントで銀メダルを獲得している。クラシカルは新田の得意種目である。特に10キロはもっとも“狙っていた”種目だった。2010年バンクーバー大会でも10キロ、スプリントで2個の金メダルに輝いている。8年ぶり、2度目の栄冠だ。
序盤に転倒もラストスパートで力を発揮
序盤に転倒はあったものの、そこから巻き返しラストスパートでトップまで駆け上がった 【写真は共同】
午前10時26分、新田がスタートした。直後、上りの入り口でつんのめるように転倒した。スタンドに詰め掛けていた日本の応援団の声援が一瞬、止まる。しかし、新田はすぐに起き上がると、力強く勾配を駆け上がっていった。
転倒というアクシデントがあったが、1周目トップのボブチンスキーに5秒6のビハインドで追いすがっていた。しかし、2周目にその差が11秒に広がった。しかも、トゥミストが新田を捉え、5秒前を走っていた。
最後の1周。上りのところにいたコーチから「グリゴリーに迫っている。食らいつけ」という情報を得た。新田は、ここから怒涛の追い上げを見せた。勝利を確信したのは、残り1.5キロ地点。この4年間つきっきりで指導してくれた長濱一年コーチから「グリゴリーに2秒勝っている」と聞いた時だったという。そこからさらにギアを上げてゴールを駆け抜け、24分06秒8でフィニッシュ。ボブチンスキーを9秒6上回っていた。
「転倒したけれど、10キロは始まったばかり。そもそも、レース前半で勝負するのではなく最後までしっかりスピードをキープする戦略を考えていたので、冷静にレースに戻れました。ラスト1周、前を行くグリゴリーが前半に飛ばし過ぎてペースが落ちていることが分かった。そこからスパートをかけました」
ラストスパートで力を発揮するために、この4年間強化してきた。特に国立スポーツ科学センターを利用できることになり、集中した低酸素トレーニングをシーズン中に行ったことで、最後まで力を振り絞ることができた。だからこそ、グリップワックスの効果より、板を滑らせるワックスを優先することを、ワックススタッフに伝えたのだった。