チェルシーを苦しめた“メッシの守備” カウンターでチャンスを量産したバルサ
前半3分、衝撃的だったメッシの先制点
前半3分に決まったメッシの先制点。これでチェルシーの心が折れることはなかったが…… 【写真:ロイター/アフロ】
「あの角度からメッシがシュートを打ってくるとは思わず、足を閉じるのが遅れてしまった。私のミスだった。GKにとって、足の間は最も弱いところだ。忌々しいよ」と、クルトワは『BT Sport』のインタビューで答えている。
クルトワが意表を突かれた要因はさまざまだ。まず、スペースへ抜け出す瞬間、メッシはチラッと中央を見ている。この目線フェイクは、GKクルトワの予測を誤った方向へ誘導するのに一役買った。その後も、回転数の高いメッシにしては珍しいほどの大股でアプローチし、勢いのままに右足をぶつけてシュート。このリズム変化も読みにくい。そして言うまでもなく、右足はメッシの利き足ではない。角度、右足、目線フェイク、リズム、時間帯。すべてが意外性を伴う先制ゴールだった。
しかし、この衝撃的なゴールがチェルシーの心を折ったのかと言えば、そんなことはない。逆だろう。ホームの第1戦を1−1で引き分けたチェルシーにとって、第2戦は、最初から1得点以上が必須となる。失点したからといって、この試合の最大の目標が変わるわけではなく、むしろチェルシーにとっては、開き直って攻撃に出るきっかけとなった。
厄介だったメッシの“偽のサボり”
前半20分のデンベレの追加点は見事なカウンターによるものだった 【写真:ロイター/アフロ】
見事なカウンターだった。メッシはまるで守備のフリーマンだ。バルセロナはメッシがいなくても守備が成り立つように、DF4人とMF4人が「4−4」でブロックを築いているが、そこに時折、ふらふらとメッシがやって来る。サボって歩いていると見せかけ、急に思い立ったように寄せてくるのだ。“偽のサボり”である。
2点目が決まる前、前半14分にも印象的なシーンがあった。GKクルトワからクリステンセンへパスをつないだところに、ふらふらとメッシが寄せてきた。余裕を持って前を向こうとしたクリステンセンは驚き、慌ててボールを持ち直し、隣のアントニオ・リュディガーに横パスして回避している。
ハードワークするわけではなく、メッシは急に思い立ったように体を寄せる。そのタイミングは、ボールホルダーの死角に入った瞬間や、相手がトラップするために目線を下げた瞬間など、実にいやらしいものだ。天才ドリブラーは相手をかわすだけでなく、逆にどんなタイミングで、どんな方向からプレスをかければ、最も怖いプレッシャーになるのか。それも熟知している。攻撃のセンスと守備のセンスは、表裏一体。スアレスはもちろん、メッシの守備も、チェルシーにとっては相当厄介だったはずだ。