チェルシーは早急に戦力の底上げが必要だ 不満をためるコンテが望む「120%」の努力
開幕戦で見せた冷ややかで自虐的な笑い
昨季の王者チェルシーは開幕戦で退場者2人を出し、バーンリーに2−3で敗れた 【Getty Images】
前半14分、センターバック(CB)で新キャプテンのガリー・ケイヒルに一発退場を命じた主審が敵にFKを与えた直後の一幕。終盤にタイミングを逸したタックルで2枚目のイエローをもらう運命にあったセスク・ファブレガスだが、あの場面では正当に相手からボールを奪ったように見えた。だが、主審はイエローカードを提示。そんな時、ベンチ前で一緒に戦う印象が強烈だった昨季のコンテであれば、不利な判定には怒鳴り声を上げて不満を示し、かつ選手たちに守備への切り替えを叫んでいたのではないか?
指揮官の中に鬱積していた憤まんの源は、補強不足のまま開幕を迎えたチーム事情だろう。当日のスタメンは平均年齢約26.5歳。ベンチは平均22.7歳。これ自体は一概に問題とは言えない。ユース出身の若手が出場機会に恵まれない傾向が続くプレミアで、その代表格と言えるチェルシーのリーグ戦メンバーとしては歓迎されてもおかしくない。
ただし、それは監督の起用方針に沿ったメンバーであればの話。エデン・アザールとペドロ・ロドリゲスをけがで欠く前線で先発したジェレミー・ボガと、終了間際にベンチを出たチャーリー・ムソンダの両20歳がプレミア初出場を果たす開幕戦など、コンテは意図していなかったはずだ。チャンピオンズリーグ(CL)にも復帰する今季に臨む指揮官は、即戦力を加えての総合力底上げを望んでいたのだから。
「120%」という表現に込められた意味
コンテがCLでも優勝を狙う意気込みでいることは想像に難くないが、今夏の移籍市場でフロントは指揮官の満足のいく働きは見せていない 【Getty Images】
ところが続く今夏の移籍市場で、補強の主導権を握るチェルシーのフロントは動きが鈍かった。オフ中にイタリアから「激怒」や「離任」という言葉も聞こえた2カ月半を経て、コンテは昨季優勝監督がうそのような暗く険しい表情で今季開幕を迎えている。7月に合意した新契約が年俸アップだけにとどまり、残り2年間の契約期間の延長には至らなかった背景にも、補強に見られる自身への支援レベルに対する疑問があったと考えられる。
開幕戦前の会見で手元の戦力に「ハッピーだ」と言ってはいる。「移籍市場で最善を尽くしているクラブを信頼している」とも言っていた。しかし、その表情や仕草からは本心とは思えなかった。「指導に専念するのが仕事」である自身と、「向上を期す」選手たちの取り組み姿勢に関して繰り返した「120%」という表現は、そうでなければ今季の成功などあり得ないほどの戦力不足だと経営陣に訴えるかのよう。コンテは「ハードワーク」がモットーの監督で、100%以上を尽くす決意を「110%」と表現する例は一般的でもあるが、あえて今季は「120%」の努力を要すると言うのだ。