金メダルへ土台が築けた侍ジャパン
稲葉監督の掲げる“結束”を具現化

日の丸の緊張感を経験させる2試合

2試合連続完封勝利でオーストラリアとの「侍ジャパンシリーズ2018」を戦い終えた野球日本代表「侍ジャパン」。フル代表初采配となった稲葉監督(写真左から2人目)は東京五輪へ向けて「今回のメンバーを軸にする」とコメントした
2試合連続完封勝利でオーストラリアとの「侍ジャパンシリーズ2018」を戦い終えた野球日本代表「侍ジャパン」。フル代表初采配となった稲葉監督(写真左から2人目)は東京五輪へ向けて「今回のメンバーを軸にする」とコメントした【写真は共同】

 2試合連続完封勝利でオーストラリアとの「侍ジャパンシリーズ2018」を戦い終えた野球日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督は、記者会見の最後、2020年東京五輪に向けたチーム作りについて力強く答えた。


「今回の選手を軸にしていきます。その中で今年若い選手が活躍して、トップチームに集合したときにどうやって国際大会で活躍するかを見てみたいという選手は呼びたいと思います」


 3日の初戦は試合中盤に得た2点を守り切り、4日の2戦目は初回から得点を重ねて6対0で完勝を収めた。投打ともに侍ジャパンのいいところばかりが目立った格好だ。もちろん、オーストラリアがフルメンバーでなかったことを差し引いて考える必要はある。


 同チームのサム・フィン広報によると、今回来日した28選手のうちメジャーリーグ(MLB)傘下に所属しているのは、捕手のアラン・デサンミゲル、二塁手のロバート・グレンディニングら6人のみ。前回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本戦に登板したジョン・ケネディなど同国トップクラスの選手たちは、アメリカでMLBのスプリングトレーニングに参加している。一方、4日に先発したティモシー・アサートンは学校の先生、3日に「2番・ライト」で出場したティモシー・ケネリーは消防士として働きながら、野球をプレーしているという。


 それでも、初めてフル代表としてチームを組んだ稲葉ジャパンにとって、この2試合が意義深いものになったのは間違いない。今回のオーストラリアとの強化試合について、指揮官はこう位置付けていた。


「日の丸を背負って戦う緊張感など、いろいろな思いがこのユニホームに付いていると思います。その中で自分自身のコントロールをすることが、“いざ”というときに必要になってきます。まずはそういう経験をしてもらいたい」


 すでにWBCやプレミア12を経験している中核メンバーと、「これから見てみたい若い選手」をバランスよく組み合わせた今回、各自が日の丸を背負うプレッシャーを感じながら、国際試合で勝つために必要なことを全うした。チームにおける役割分担と、事前情報が少ない中での対応力である。

“陰の殊勲者”秋山のデータ活用法

プレミア12、WBCと国際試合の経験を積み重ねてきた秋山。相手投手の持ち球を聞くにも、軌道をしっかりとメモするなど自身で攻略法を探し出した
プレミア12、WBCと国際試合の経験を積み重ねてきた秋山。相手投手の持ち球を聞くにも、軌道をしっかりとメモするなど自身で攻略法を探し出した【写真は共同】

 3番・柳田悠岐(福岡ソフトバンク)、4番・筒香嘉智(横浜DeNA)の連続タイムリーで膠着した状況を打ち破った3日の試合後のインタビューで、稲葉監督が先に称えたのは“影の殊勲者”だった。


「粘って、粘ってフォアボールをとって、それを送ってという形が非常に良かったと思います。(柳田、筒香は)そういうところで点をとる勝負強さはさすがだと思いました」


 0対0で迎えた6回、1番・秋山翔吾(埼玉西武)が13球粘って四球を選び、2番の菊池涼介(広島)が送ったチャンスを主軸がモノにした。先制のホームを踏んだ秋山にとって、この出塁は“必然的”なものだった。


「事前に相手ピッチャーの映像について、ランナーがいるときなどケースに応じて見せてもらっています。6回の打席で投げたピッチャー(左腕スティーブン・ケント)の映像を確認していて、球種についてイメージが沸いていたので、三振をなかなかしないような目つけができていました。たぶん映像がなかったら、(相手投手が交代した直後の)先頭バッターだったので、どんな軌道でどんなイメージかというのは湧かなかったと思います」


 秋山は15年のプレミア12、そして昨年のWBCに出場するなど侍ジャパンの常連メンバーだ。国際経験を重ねるなか、対戦相手のデータ分析について自身の攻略法を探し出した。


「最初は『このピッチャーの持ち球です』と球種ごとに(スコアラーに)やってもらっていたんですけど、自分が映像を見てどう見えるか、いまは一言メモしています。例えば『カーブ』と言われても、実際にどういう(軌道の)カーブなのかと一重に言えないこともあるので、自分で映像を見て、このカーブの特徴というのをちょっとずつ確認しています」

中島大輔
中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』がミズノスポーツライター賞の優秀賞。

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