山中慎介、踏みにじられたフェアな戦い ボクシングを冒とくしたネリの失態
かつてない敵意と怒りに満ちた空気
山中慎介は4度のダウンを喫し、2回TKO負け。体重オーバーで王座を剥奪されたネリに雪辱はならなかった 【写真は共同】
「そもそも成立していない試合。ネリはボクサーとして、あんな失態を犯して、ボクシング界から去ってほしいですね。よくリング上で勝って喜べるなって、どんな神経してんのか。よく分からないですけど、ボクサーの中で一番尊敬できないです」
山中のひとつ前の試合でIBF世界スーパーバンタム級王座の初防衛に成功した岩佐亮佑(セレス)が、目に怒りの涙をためながら吐き捨てた言葉は、祈るような思いで見守っていた人々の声を代弁していた。
それにしても最初から最後まで、これほど敵意と怒りに満ちた空気は、かつてなかったのではないだろうか。両者が再戦に至った背景が、感情をさらに増幅させた。
1階級上のリミットすら超えていた
ネリ(右)の1回目の計量は、1階級上のスーパーバンタム級のリミットすら超えていた 【写真は共同】
そんな状況で迎えた一戦での体重制競技にあるまじき大失態である。一連の騒動と受け入れがたい敗戦をのみ込み、この一戦だけに懸けてきた山中の思いを踏みにじり、ファンの感情を逆なでした。ボクシングを冒とくしたと糾弾されても仕方があるまい。計量失格までの体重を追いかけていくと、ネリが故意に体重を落とさなかったのではないかという疑いも濃厚になるのである。
ネリは1回目の計量では55.8キロと2.3キロのオーバー。これは1階級上のスーパーバンタム級のリミットにも収まっていない。ネリ陣営が減量失敗の全責任を押しつけた栄養士の言葉を信じれば、計量当日の朝8時の時点で3キロオーバー。計量会場のホテル周辺を走るネリの姿が複数名から目撃されているが、13時15分の計量までに落ちたのは700グラムということになる。それから15時過ぎの再計量では54.8キロと1.3キロのオーバーでギブアップ。午前中よりもはるかに短時間で300グラム多い1キロも落ちているのは、いかにも不自然である。
振り返れば、計量前々日の予備検診の時点でネリ本人が「2キロオーバー」と確かに言っていた。これも信じるならば、計量当日までの2日間で体重を減らすどころか、1キロも増えていることになるのだ。少なくとも、まったく体重管理がなされていなかったことは間違いないと言えるのではないだろうか。