トータル的な強さを感じた羽生の演技 安藤美姫が平昌五輪の男子SPを解説
自己ベストに迫る111.68点を出し、ガッツポーズを見せた羽生 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
負傷からの復帰戦となった羽生は、演技冒頭の4回転サルコウを決めると、その後も後半のトリプルアクセル、4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーションをすべて成功。圧巻の演技で好スタートを切った。
この男子SPの結果を受けて、2007年と11年の世界選手権を制し、06年トリノ大会、10年バンクーバー大会と2度の五輪に出場した安藤美姫さんに各選手の演技を解説してもらった。
羽生選手は表現力が以前より上がっている
安藤さんは羽生の表現力が以前より上がっていると評する 【写真:エンリコ/アフロスポーツ】
選手個々についてですが、SP1位の羽生選手は現地入りしてから、彼の言葉の節々に強さや、「不安がないんだろうな」という充実感がうかがえていたので、状態は良いのではないかと見ていました。6分間練習ではトリプルアクセルをパンクしての入りだったのですが、次の4回転のコンビネーションをきちんと調整して、質の良いジャンプを跳んでいたので、「これは精神的にも大丈夫なんだろう」という印象を受けました。
ジャンプに関しては完璧だったと思います。強いて言うならば、4回転サルコウや、4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーションは、もっと流れのある質の良いジャンプを跳べる選手です。それを跳べていたら、どこまで点数が伸びたのかなとは感じました。それでも、トータル的に強いと思いましたし、スピン1つをとっても正確でした。
また、それ以上に感じたのは音との調和です。最初は静かに入って、最後の盛り上がるところはピアノの旋律に合う動きをしていました。表現力の面では以前よりもさらに上がっていると感じました。具体的には音のタメや、力をふっと抜くしぐさなどです。以前に使用していた曲(14−15シーズン、15−16シーズン)だったということもあり、そのときと比べて成長がすごく見られました。私個人としては、ジャンプよりもそちらに目がいきました。
1位と2位を分けたものは演技構成の差
羽生(中央)と2位のハビエル(左)の差は演技構成によるものだったと安藤さんは分析 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
羽生選手とそのハビエル選手は、4回転時代と言われる中、今回はサルコウとトウループしか跳んでいません。それでもトップ2に入りました。これがフィギュアスケートの面白いところで、いろいろな種類の4回転を組み込むよりも、質の高いジャンプを成功させることがまずは重要です。GOE(出来栄え点)を見ても、両選手は質の高い要素をきっちりと並べたことで上位にきたという印象です。
2人の差については、演技構成によるものです。羽生選手は後半にトリプルアクセルと4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーションを持ってきた。それに対してハビエル選手の後半はトリプルアクセルのみです。その差が出たように思います。