複合・渡部暁斗の強さの秘密とは? 目指すは「自分のプロフェッショナル」

小林幸帆
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やるならとことん極めるのが複合選手

4度目の五輪に挑む渡部暁斗。その強さの秘密とは 【写真は共同】

 瞬発力のジャンプと持久力のクロスカントリー。求められる能力も違えば、適した身体のつくりも、使い方も全くの別ものだ。スリムなジャンプ選手とごついクロスカントリーの選手。たとえば平昌五輪に出場するジャンプの葛西紀明(土屋ホーム)は176センチ、59キロだが、クロカンの吉田圭伸(自衛隊)は175センチ、74キロ。体格だけでもその違いは一目瞭然(りょうぜん)だ。だからこそ、ノルディック複合の王者は「キング・オブ・スキー」とたたえられる。

 ノルディック複合で日本勢初の個人での金メダルに期待がかかるのが渡部暁斗(北野建設)だ。ソチ五輪ではノーマルヒルで銀メダルに輝き、日本に20年ぶりの複合個人でのメダルをもたらすと、昨年の世界選手権ラージヒルで再び銀メダリストに。ワールドカップ(W杯)総合も過去6シーズンは2位と3位がそれぞれ3度ずつ。世界トップ3に君臨し続ける。今季はW杯で単独最多の5勝を挙げ、総合順位でもトップ。平昌五輪でも優勝候補の最右翼と言っていい。

 4度目の五輪に挑む29歳、渡部暁の強さの秘密は何なのか。

 ジャンプとクロスカントリー、どちらか一方が抜群に得意で、運や条件も味方につけて時に優勝する選手もいるが、渡部暁は「勝てちゃっているだけ」とそれをソフトに否定する。それは、ジャンプ選手並みの飛躍、クロカン選手並みの走りをそれぞれ追求してきたからだ。「小さい時から高レベルで両方のバランスが取れている選手を目指していて、それを自分の中で消化して形にしてきた」という。

 しかし、両立はそう簡単ではない。飛んで走れる選手として完成している渡部暁も一昨季は走りで苦戦し、昨季はジャンプの精度が安定せずにW杯総合優勝には届かなかった。シーズン中に力関係が逆転することも珍しくない。昨季のW杯で渡部暁の2勝をのぞく21試合で優勝をさらったドイツ勢は、両立を実現して圧倒的な強さを誇ったが、今季は一転してジャンプが不調。「彼らも続かなかったところが、両立がどれだけ難しいかということを示している」と渡部暁も語る。
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著者プロフィール

1975年生まれ。東京都出身。京都大学総合人間学部卒。在学中に留学先のドイツでハイティーン女子から火がついた「スキージャンプブーム」に遭遇。そこに乗っかり、現地観戦の楽しみとドイツ語を覚える。1年半の会社員生活を経て2004 年に再渡独し、まずはサッカーのちにジャンプの取材を始める。2010年に帰国後は、スキーの取材を続けながら通訳翻訳者として修業中。

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