“KJ”が振り返る米国での高校生活 「実力主義」の世界で貫いた文武両道

大島和人

学業面をクリアするための努力も必須

松井が「超厳しい」と話すNCAAの規則。学業面をクリアするための努力も必要だったという 【スポーツナビ】

――コロンビア大に進学したということは、勉強もかなり頑張ったと思うのですが。(編注:コロンビア大は米国を代表する名門大学)

 そうですね。高校でいい成績を収められれば、大学のオプションが増える。だから頑張ろうと考えていました。真面目にやったら時間がかかると思うんですけれど、それをうまくやりこなすという感じですね。

 コロンビア大でもそうでした。「明後日までに150ページ読んでこい」とか平気で言ってくる。「そんなの読めるわけないじゃん」って思うのですが、先輩のノートをもらうとか、うまく工夫しながら勉強していました。

――先ほど「練習が3時間以内」と言っていましたが、NCAAならではの規則もあるんですね。

 超厳しいです。オフシーズンは「ボールを使った練習はダメ」だとか。「何グラム以上入ったプロテインは飲んじゃいけない」とか。細かいところまでルールで決められています。

――オフの練習禁止期間はどう過ごすのですか?

 オフシーズンは「HCが教えちゃいけない」というルールなんですよ。HCが指示するのはだめだけれど、アシスタントコーチにやらせるのはOKです。そうやってみんなルールをうまくかいくぐって練習をしているんです。バスケットボールを使っちゃだめだから、バレーボールで練習しようとか。バレーボールでもディフェンスの練習はできますから。

――スクリーンの動きもできますね。

 そう、そういうことです。

――学業面をクリアするための努力はどうだったのですか?

 高校もそうですけれど、NCAAは成績が何点以上じゃないとバスケができないというルールです。試合に出られないのはバスケ的にもマイナスだから、部が家庭教師にお金を払うんです。「どの科目の家庭教師がほしい?」と聞かれて、「全部ほしいからつけて」と言うと「分かった」って。

 僕はエコノミックスメジャー(経済学専攻)だったので、スタティスティクス(統計学)とか、数学的なもので家庭教師をつけてもらっていました。最大で4人くらいでした。

「お手本にしたいのはトンプソン。カリーは天才」

松井が「お手本にしたい」と話すトンプソン。シュートのフォームはカリーよりも「きっちりしている」そう 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

――松井選手は日本の部活を経験していないから比較は難しいと思いますが、米国の「違い」はどういうところに感じますか?

 日本の高校は1年間「大会に勝つ」ことだけを目標にしている気がします。米国は一人一人を伸ばそうという方向に向いています。試合が無いときはそれぞれの足りないところをコーチが評価して、「こういうことをやろう」と挙げてくれる。だから自分としても「こういうことをやればもっとうまくなるし、もっと使ってもらえるんだ」となる。勝ち負けだけでなく、個人を成長させてくれる環境なのかなと思います。

――でも指導が「甘い」ということではないですよね?

 マナーにはめちゃくちゃ厳しかったです。キリスト教の学校なので汚い言葉は発しちゃだめですし、移動のときはジャージではなくスーツでなければいけない。あとテーブルマナーも学びました。

 コーチはめちゃくちゃ怖いですよ。ゴミ箱を蹴ったりしていましたから。完璧主義で細かく教えてくれました。ただ練習がきつくなるとか、「もう一回やれ」というのはありました。

 大学のときも1年生が寝坊して練習に遅れて、部員全員で走ったりはしました。でもそれ以降は4年生が起こしにいくようになりました。4年生がわざわざ1年生を起こしにいくって、日本じゃあり得ないですよね。「1年生は何も知らないから、4年生が教えろよ」とコーチに言われたらしいです。

――米国にいるときからNBAはよく見られていたそうですが、好きなチームはどこですか?

 たくさんありますよ。マブス(ダラス・マーベリックス)とか(ニューヨーク・)ニックスは昔からずっと好きです。マブスはダーク・ノビツキーのシュートが好きです。片足フェイドアウェイとか、ああいうのをまねてやったりします。ニックスはコロンビア大のときによく見にいっていました。そのときは弱かったんですけれど。

 ウォリアーズももちろん好きです。クレイ・トンプソンのようにシュートがうまい選手を僕は好きなので。シュートのうまい人が活躍しているチームという意味では、(ヒューストン・)ロケッツもすごく好きです。

――NBAを代表するシューターと言ったらやはりステフィン・カリー(ウォリアーズ)です。単純に彼のシュートはなぜあんなに入るんですか?

 打つタイミングも早いですし、どこからでも打てるのでディフェンスから見て守りにくいところがあります。シュートのフォームは決してきれいではないと思いますが、体勢が崩れても入れられる感じですね。トンプソンの方がきっちりしています。フォームが毎回同じで、同じボディバランスで打っている。僕がお手本にしたいのはトンプソンですね。カリーは天才です。

日米でシュートの技を磨いてきた松井にとっても、カリーはやはり「天才」なのだ 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 松井選手の「シューター評」は興味深かった。日米でシュートの技を磨いてきた松井選手にとっても、カリーはやはり「天才」という評価になる。

 モントローズ高、コロンビア大で彼が経験したことは、本人やチームにとってのみならず、日本のバスケットボール界にとってもきっと「財産」になる。そんなことも考えさせられたインタビューだった。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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