オリックス平野佳寿は謙虚にメジャーへ 心身ともにタフな名リリーバーの挑戦

米虫紀子

12月26日、ダイヤモンドバックスへの移籍報告会見を行い、異国での奮闘を誓った平野 【写真は共同】

 オリックスから海外FA権を行使しメジャー挑戦を目指していた平野佳寿が、アリゾナ・ダイヤモンドバックスに移籍することが決まった。

 12月26日にオリックスの球団施設で報告記者会見を行った平野は、ダイヤモンドバックスを選んだ理由について、「一番初めにオファーをいただいていましたし、GMや監督とお会いした時に、僕に対する熱意を持って誘ってくれたので、『これだけ評価していただいてたんだな』と思ったのが一番の決め手になりました」と答えた。

 ダイヤモンドバックスのトーリ・ロブロ監督はヤクルト(現東京ヤクルト)でのプレー経験があるということも大きかった。

「監督も日本でプレーしていたので、海外でプレーする選手の気持ちや、家族の気持ちをわかってくれていて、『しっかりサポートする体制を整えるから』と言っていただいたのは本当に嬉しかったですね」

 対戦を楽しみにしているバッターは? と聞かれると、少し考えてから「大谷君」。エンゼルスへの移籍が決まり、前日に札幌ドームで記者会見を行ったばかりの大谷翔平の名前を挙げて笑いを誘った。また、移籍先が決まって「ホッとした」と明かし、終止晴れやかな表情だった。

WBCでも活躍した剛腕

 2005年の大学・社会人ドラフト希望枠でオリックスに入団した平野は、先発としてスタートし、10年にリリーフに転向。12年終盤からクローザーを務め、長身から投げ下ろす150キロを超えるストレートや落差のあるフォークを武器に、13年には防御率1.87という数字を残し絶対的な守護神となった。

 14年は、比嘉幹貴や馬原孝浩から佐藤達也、平野へとつなぐ勝利の方程式が盤石で、福岡ソフトバンクと激しい優勝争いを繰り広げた。平野はパ・リーグ新記録となる40セーブを挙げ、セーブ王に輝いた。この年のオフにメジャーの球団から誘いがあり、それをきっかけにメジャーを意識し始めたという。

 オリックスでは絶大な存在感を発揮していながら、侍ジャパンには縁がなかったが、今年、33歳で初めてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のメンバーに選出された。初戦こそ失点したものの、その後は5試合連続無失点の完璧なリリーフで、相手の勢いを止める役割を見事に果たした。

米国で変えるべきところと変えない部分

 WBCのあと、メジャーの複数球団が平野に興味を持っていると聞き、メジャー挑戦への思いが高まっていった。

 以前、「行ってみないとわからないですけど」と前置きした上で、アメリカで変えるべきところと変えない部分をこう話していた。

「近年、こっちでは(打者が)フォーク待ちみたいな傾向も出ていたけど、向こうに行ったら僕のことを知らないバッターばかりなので、真っすぐ、フォーク、スライダーをうまく合わせて投げるというのは、自分の武器として変えなくていいとは思います。ただ、向こうに行ったら日本よりもフルスイングしてくると思うので、もっと高低を使うとか。あまり日本ではやっていなかったけど、テレビで見ていると、そういうことをしているピッチャーが抑えているように見えたので、真っすぐでも今までよりもしっかりと、全部の範囲を使うことが必要なのかなと思います」

 その上で、平野が最も意識する数字は「登板数」だ。

「これは日本でもずっと言ってきたんですけど、向こうでもやっぱり50、60、70試合と、しっかり投げたいですね」

 11年に72試合、12年に70試合に登板するなど、リリーフに転向した10年以降の8年間で計476登板を記録。この数字から、平野のタフさがわかる。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。大学卒業後、広告会社にコピーライターとして勤務したのち、フリーのライターに。野球、バレーボールを中心に取材を続ける。『Number』(文藝春秋)、『月刊バレーボール』(日本文化出版)、『プロ野球ai』(日刊スポーツ出版社)、『バボちゃんネット』などに執筆。著書に『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(東邦出版)。

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