オリックス平野佳寿は謙虚にメジャーへ 心身ともにタフな名リリーバーの挑戦

米虫紀子

新人の救援失敗で見えた平野の偉大さ

オリックスでは救援陣の柱として活躍。通算156セーブ、139ホールドの実績を持つ 【写真は共同】

 体の強さに加え、守護神はハートも強くなければ務まらない。平野はそのポジションを約5年間務めた。

 今年は再調整のため、7月から8月にかけて約20日間登録を抹消され、ルーキーの黒木優太や助っ人右腕のヘルメンが9回を任されたことがあった。

 黒木は役割を果たしていたが、初めて1点差の9回のマウンドに上がった7月30日の東北楽天戦で、2アウトを取ってから急に四球を続けて崩れ、2点を失い逆転された。抑えの怖さを知った黒木は、「やっぱりどこかで『早く終わりたい』って、自分の中で、心では思っていなくても体が感じていたりする。平野さんの大変さがわかりました、十分に」と話していた。

 そんな鉄人・平野も、黒木がプロ初勝利を挙げた試合後に、記念のウイニングボールをスタンドに投げ込むフリをして慌てさせるなど、普段は茶目っ気たっぷりの兄貴分。長年ブルペンをもり立て、柱であり続けたが、ついにオリックスを去る時がやってきたのだ。

控えめな姿勢も数カ月後には…?

 通算156セーブ、139ホールドという偉大な数字を積み重ねてきたが、平野は謙虚にこう語る。

「日本でやったことがアメリカで通用するとは思っていないので、変な勘違いはしないようにと思っています。同じ野球ですけど、まったく違うものだと思っているので、今までの経歴というのは置いといて、一から、ルーキーのつもりでしっかりアピールして、自分のポジションを勝ち取れるように頑張りたいと思います」

 控えめな男は、ファンに対しても「国は変わりますけど、自分らしさを出していきたいと思いますので、少しでいいのでまた応援していただけたら嬉しいです」と控えめなお願いをした。

 ただ、「代表では新人なんで、助けてもらおうと思います」と言いながら頼もしい活躍を見せたWBCの時のように、数カ月後にはメジャーでも、しっかりと自分の居場所を確保していそうな気がする。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。大学卒業後、広告会社にコピーライターとして勤務したのち、フリーのライターに。野球、バレーボールを中心に取材を続ける。『Number』(文藝春秋)、『月刊バレーボール』(日本文化出版)、『プロ野球ai』(日刊スポーツ出版社)、『バボちゃんネット』などに執筆。著書に『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(東邦出版)。

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