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「自分の強さをいかにみせるか」
井上尚弥が目指すボクシングスタイル

絶対王者の孤独 競う相手は自分自身

強すぎて対戦相手が見つからないという強者の宿命。井上尚弥もその呪縛と無縁ではない
強すぎて対戦相手が見つからないという強者の宿命。井上尚弥もその呪縛と無縁ではない【写真:ロイター/アフロ】

 強者の宿命。プロボクシングの世界では、それが残酷にのしかかるケースがある。強すぎるがために、対戦相手が見つからない。実績ある好敵手からは、時に敗北を恐れて敬遠される。井上尚弥(大橋)も強さがゆえに、その呪縛と無縁ではない。「対戦相手で気持ちが上がらない時も正直あることはあります。でもそこは、そういう相手にどう勝つか。どんなパフォーマンスで圧倒できるかに焦点を当てています」


 5年前、井上父子がプロ入りに際して、大橋ジムに出した条件。「強い選手とだけ戦う」。規格外のポテンシャルから、残念ながらその条件がいつも守られているとは言い難い。


 キャリア初の米国遠征となり、大いに注目を集めた昨年9月のアントニオ・ニエベス(米国)戦。ダウンを奪ってのストップ勝ちで6度目の防衛を果たすが、終盤には勝利を放棄したかのように逃げ腰の挑戦者を前に戸惑いを隠せなかった。


「僕はKOしたい気持ちが強くて、ああなるとやっぱりダメですね。1ラウンド目から大振りになったり。まったく自然体ではなかった。空振りでバランスを崩したり。日本で見せることはないような試合内容でした」と苦笑いで振り返る。相手の状態以上に、自らの精神面に苦言を呈するかのように。挑戦者のパフォーマンスは決して高くなかったが、初の米国遠征で気負いすぎた自分のボクシングこそが問題だった。


「相手が自分の期待していた相手ではなかったら、その時は自分がいかに強さを発揮して倒すか。モチベーションという意味では、今はもう相手とかではなく、自分の強さをいかに見せるかですね」


 絶対王者は孤独でもある。リング上では1対1で対戦相手と向き合わねばならない、という単純な話ではない。競う相手は他の並み居るボクサーたちではなく、誰よりも自分自身なのだ。

高い緊張感で臨んだ2つのタイトルマッチ

 そんな井上が高い緊張感の中で臨んだ試合が、6戦目と8戦目。14年4月にWBC世界ライトフライ級王座に挑んだ試合と、同年12月にWBO世界スーパーフライ級王座に挑んだ試合。戦前から勝利を確信していたわけではなかった。


「自分が挑戦者でしたし、自分でも勝つか負けるか分からないなと思っていました。ただ自分が求めていた結果とは全然違いましたね。もっと苦戦すると思っていた。もともと判定で勝とうと考えていましたし」


 6回TKOで当時国内最短記録となるプロ6戦目での世界王者になると、年末には2回KOで当時世界最短記録となる8戦目での世界2階級制覇を達成。研ぎ澄まされた緊張感と高いモチベーションが、本来の姿を解き放ったかのようだった。


「単にすごい選手同士でやれば盛り上がりますよ。常に強い相手と大きな舞台で、というのは会長にオファーし続けています」


 より高い壁が、本当のポテンシャルを引き出してくれることも知っている。格下相手にもパフォーマンスを落とすことなく高い次元で発揮できるように。その姿勢を崩すことなくキープし続け、巨大な敵とのぶつかり合いを心の底で望んでいる。


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アスリートと一流仕事人に学ぶココロとカラダを整えるマガジン。2017年6月、雑誌・WEB版共に創刊。日々快適に、各々が目指す結果に向けてサポートするマガジンとして、アスリートのみならず、多くの人の心身のコンディショニングの役に立つ媒体を目指している。「こうしたら痩せますよ」「こうしたら健康になりますよ」というような時代とともに変わる健康や医学の理論は紹介せず、アスリートや各業界で成功している人の事例、メソッド、オピニオン、ライフスタイル等を紹介していくスタンスを貫く

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