坂本花織をSP首位に導いた“平常心” 積み重ねてきた自信「いけるんじゃね」
会心の演技「全くびびらなかった」
会心の演技でSP首位に立った坂本花織 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
「シーズン最初の方は練習でもミスばかりしていて、不安なまま試合に出ることがありました。でも練習を重ねていくうちに自信がついて、今では安心して試合に臨めています」
その言葉通り、坂本は平昌五輪の出場権が懸かったフィギュアスケートの全日本選手権女子ショートプログラム(SP)で、73.59点をマークし首位に立った。演技前半のスピンとステップはレベル4を獲得。基礎点が1.1倍になる後半に入れた3回転フリップ+3回転トウループ、3回転ループ、ダブルアクセルの3つのジャンプもすべて1点以上の加点がついた。最後のスピンこそバランスを崩しかけたが、それもなんとかこらえた。ガッツポーズが飛び出すまさに会心の演技だった。
「いつもどおりできたので得点は70点ちょっとくらいかなと思っていたんですけど、それをはるかに超えたのでびっくりしかなかったです」
そう興奮して語る坂本は、多くの選手が緊張するこの舞台を楽しんでいるようだった。さらに言葉を継ぐ。
「一番良かったのは、ずっと平常心でできたことですね。全くびびらなかったです」
今も実践する中野コーチの教え
GPシリーズデビューはシニアに上がった今季。ロシア杯こそ5位に終わったが、11月のスケートアメリカでは自己ベストを大幅に更新する合計210.59点をマークし、宮原知子(関西大)に次ぐ2位となった。
こうした結果を残せるようになったのも、平常心で試合に臨めていることが要因として挙げられる。そのために以前から実践しているのが「練習のときは試合だと思って緊張感を持って練習して、試合のときは練習通りと思ってやる」こと。坂本を指導する中野園子コーチから教えられたことで、今もそれを意識的に行っている。
また「朝の練習では脳が働かなくて、何も考えられないのですが、試合では緊張して頭が真っ白になることもあるので、いつでもノーミスできるように意識しながら練習しています」とも語る。
SPの演技前には、中野コーチから「やっといで〜」と軽い感じで送り出されたという坂本。あまりいろいろな言葉をかけず、坂本に適した方法でリラックスさせる中野コーチの存在も、平常心でいられる要因の1つだろう。もっとも練習のときは、叱咤されることもあるようで、「メンタルは日々、中野先生に鍛えられています。いつもきつい言葉に耐えているので」と、坂本は苦笑する。
フリーは最終滑走…この状況を楽しめるか
最終滑走で臨むフリーでも同様に舞台を楽しむことができるか 【坂本清】
だが、この大会で今季9試合目となる坂本が積み重ねてきた自信は揺るがない。
「シーズンが始まって、自分がシニアというのはあまり実感がなかったんですけど、今季はたくさん試合に出させていただいて、試合にも慣れたし、自分がシニアなんだなというのをだいぶ実感してきました。点数も出るようになったので、自信にもなりましたね。スケートアメリカからは一気に『いけるんじゃね』って(笑)」
まだこうしたあどけなさも残る高校2年生。自分の性格を「負けず嫌い、明るい、面白い」と分析する。独特の雰囲気を醸し出す五輪選考会を勝ち抜くには、いかにその舞台を楽しめるかというのも重要なポイントだ。プレッシャーによって本来の実力を発揮できず、暗い表情を見せる選手もいる中、坂本の明るさは際立っている。
「フリーも落ち着いてできたらノーミスでいけると思うので、しっかり自分のできることを精いっぱい頑張って、表彰台を狙っていきたいです」
勢いは間違いなくある。フリーは最終滑走。成長を続ける17歳がこの状況をも楽しむことができれば、平昌五輪出場への一発回答もありえそうだ。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)
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