“神童”那須川天心、批判は「いい風」
固定概念を壊し、キックの上位概念作る
自伝「覚醒」を発売した“神童”那須川天心。10代での自伝本出版はかなり稀だ
自伝「覚醒」を発売した“神童”那須川天心。10代での自伝本出版はかなり稀だ【茂田浩司】

 12月6日、“神童”那須川天心の自伝「覚醒」(那須川天心著。クラーケン)が発売された。10代での自伝本出版は、格闘技界ではおそらく最年少、スポーツ界でもかなり稀なことである。

 11月23日、東京・TDCホールで開催された「RISE」では南米20冠王者イグナシオ“El Misil”カプロンチ(アルゼンチン)を圧倒。3回TKO勝利を収め、デビュー以来の連勝記録を「26」に伸ばし、年末の大一番、12月31日「RIZIN」(埼玉・さいたまスーパーアリーナ)に弾みをつけた。


 今回は自伝出版のことや、大みそか「キックボクシングルールトーナメント」、そして「神童」が描く未来像について話を聞いた。

父のプレッシャーで「プレッシャーに強い選手」になった

父との2人三脚で歩んできた天心。そのプレッシャーが、プレッシャーに強い選手になった理由だ
父との2人三脚で歩んできた天心。そのプレッシャーが、プレッシャーに強い選手になった理由だ【写真:中原義史】

――19歳にして自伝が発売になりましたね。


 僕は「本が出るんだ、やった!」と思ったんですけど、周りにはだいぶ「え、早すぎだろ!」って言われました(笑)。でも、5歳から空手を始めて、15歳でプロデビューして、まだ4年ですけど濃密なプロ生活を送ってきたんで、まあいいのかな、と思うんですけど。


――完成した本を読み返して、どんな感想ですか?


 本を作る時に、子供の頃のことや空手時代のことを振り返ってみて、いろいろなことを思い出したんですけど、本になってまた読み返すといろいろよみがえってきますね。だから、最近は取材がすんなりといきます(笑)。


――読みどころは?


 デビュー戦から、10月の「RIZIN」での藤田大和戦まで、一つ一つの試合を振り返ってるんですけど、それはぜひ読んでほしいですね。僕は、試合のことは相当細かく覚えているんですけど、改めて振り返ると「この試合の時はこんな調整したな」とか「この時はこうだったな」とか、いろいろなことがよみがえってきて、形に残すっていいですね。


――キック21連勝、MMA4勝、ミックスルール1勝と、4年間で驚異的なペースで試合をしてきた天心選手ですが、特に印象深い試合を一つ挙げるとしたら?


 一番思い出に残っているのは「RISE」のタイトルマッチですね(2015年5月、王者村越優汰を2回KO。RISEバンタム級王座奪取)。プロになった時「必ずRISEのベルトを獲るぞ」と思っていて、それがかなって試合後に泣きましたからね(笑)。試合の後で泣いたのは、このタイトルマッチの時と、ワンチャローン戦だけです。「おお、おお〜」みたいな感じで(笑)。感情が抑えきれなくなってしまったんですよ。


――「覚醒」で、一番印象に残ったのはお父さんとのマンツーマン練習でした。天心選手は子供の頃からこんなに厳しい練習を毎日続けてきたのか、と。


 そうですね。今となってはよかったことですけど、もし僕が途中で格闘技をやめていたら「あの野郎、あんなことしやがって!」って一生恨んでいたかもしれないです(笑)。


――ああ、今はプロの格闘家として活躍しているから。


 報われましたよね。でも、プロにもなれずに挫折してたら、きっと今ごろヤンキーですよ(笑)。練習でやってきたことを全部ケンカに活かして(笑)。


――(笑)。実際は反抗期もなかったんですよね?


 ないですね。


――天心選手の世代は「反抗期なし」が珍しくないんですか?


 いや、絶対そういう時期はありますよ。でも、僕はそうやって反抗している人を見ると「かっこつけてるんじゃねえよ!」と思いますけど。


――お父さんと「二人で格闘技を頑張ってきた」という絆があるから反抗しなかった?


 いや、そういうのはまったく考えてなかったです。ただ単に怖かったんで(苦笑)。今となっては感謝してますけどね。その時は恐怖で、何か言ったら拳でねじ伏せられて(苦笑)。だから、反抗する気にもならなかったです。


――「いつかやり返してやろう」はなかったですか?


 思ったこともないです。プロになって、ベルトを獲ったぐらいに「もうやられないだろうな」と思いましたし。でも、父親は今でも「お前にだけは絶対に負けないからな!」って言ってますけど(笑)。はいはい、って(笑)。


――「タイトルマッチや大舞台だろうが、父親のプレッシャーに比べたら大したことはない」と思うから、試合でもプレッシャーをまったく感じないんですか?


 はい。それはだいぶデカいと思いますよ。試合ではプレッシャーを感じて、普段のパフォーマンスができない選手がほとんどじゃないですか。どんなに頑張って練習して、良い動きをしてても、試合になるとプレッシャーで全然その動きが出せなくなる人を僕も見てきたので。


 たとえば、それが他人のトレーナーに鍛えられたらできるか、といえば、やはりできないんですよね。親だからこそ、普段からプレッシャーを掛けて、僕みたいに「プレッシャーに強い選手」ができたんだと思いますし。


――なるほど。


 だから、僕も「プロになって、絶対にチャンピオンになる」ってジムに入ってきた人にはめちゃくちゃ厳しくしますよ。そこであきらめるヤツは絶対に一流になれないんで。「プロになるのが目標」くらいなら、そこまで厳しくする必要はないのかなと思うんですけど。

茂田浩司

94年から週刊の情報誌でスポーツページを編集。野球、サッカー、NBA、テニス、F-1など様々な競技や選手を取材。96年からフリーに。99~02年「ゴング格闘技」編集ライター。現在は格闘技、お笑い、教育、健康、舞台・テレビ、政治・時事などを幅広く取材・執筆中。

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