“神童”那須川天心、批判は「いい風」 固定概念を壊し、キックの上位概念作る

茂田浩司

「RIZINはMMAイベント」という固定概念を壊したい

年末のRIZINではキックボクシングトーナメントに出場。希望がやっとかなったと話す 【写真:中原義史】

――さて、次戦は大みそかの「RIZIN」です。昨年は中1日で初挑戦のMMAルールを2試合やって2連勝で話題になりました。今年はキックトーナメント。「覚醒」によれば「RIZINでキックの試合」をずっと要望してきて、やっと実現したわけですね。

 本当にありがたいですよね。自分のキックの試合がテレビのゴールデンタイムで放送される。それを考えただけでモチベーションが上がりますよね。「RIZIN」で僕のキックボクシングの試合を見てもらいたいとずっと思ってて、本当に、やっとかないました。

――ただ「RIZINはMMAの大会なのに」という反応もありますね。

 多いですね。そうやってネットに書いている人たちって、なんなんですかね? ひがんでるようにしか思えないんで。

――あれ、そんな発言をしてSNSが荒れないですか?

 大丈夫です。僕が思っていることなんで。そんなことするんだったらもっとやることあるだろ、と思います。
 僕は、批判されることは自分にとって正解なんだと思うんですよ。批判されるのは「こいつ、ヤバいことやるな」と思うからじゃないかなって。周りが批判し始めたら「コイツ、もっと上にいくんじゃないか?」って危機を感じてるように思うんです。
 最初、昨年末の「RIZIN」で僕がMMAをやる、と発表されたらすごく批判されたんですよ。特にキック界の人には「絶対にやらない方がいい」って。それはイコール「コイツ、ヤバイよ、上にいっちゃうよ」だと僕は思ったんです。

――「常識」とは違うことをするから批判される?

 そういうことですよね。とらわれてるんだと思います。固定概念というか。僕はそういうものを壊していくことで、多分、もっと上にいけると思うんですよ。

――そういえば、UFC王者のコナー・マクレガーのボクシング初挑戦となったフロイド・メイウェザー戦もすごくたたかれましたね。

 そうですね。あれも常識から言えば無理なことですよね。だから、そうやって批判されたら、僕は「いい風だ」と思ってます。

――メンタル強いですね。

 そうですか(笑)。批判してくる人を見ると、この人、本当はどう思っているんだろうなって思いますよ。

――「覚醒」の中に「バカ者、よそ者しか世界を変えられないとしたら、僕はバカ者、よそ者として格闘技界を変えていきたい」とありました。いい言葉ですね。

「バカ者、よそ者しか〜」はサッカーの本田圭佑選手の言葉です。それを見た瞬間、ビビっときました。カッコイイな、本当にそうだな、って。どんなに批判されたってやる。それってバカじゃないですか。
 だけど、僕は昔からキックに携わっているわけじゃないし、いきなりMMAをやったり、そういう人間じゃないと固定概念は壊せないと思うんです。「RIZIN」といえばMMA、とか。そういうのは遅いと思うし、僕的には「時代が違う」と思うんですよね。

――肝心なのは、試合でどんなインパクトを残すか、ですね。

 そうなんですよね。

――天心選手がすごい試合をすれば「RIZINでもキックを見たい!」となる。

 僕が才賀選手とミックスルール(1回キック、2回MMA)をやった時もだいぶ批判されたんですよね。でも、今回はキックルールと発表されると「見たい」という声も結構増えたんで、いいのかな、って。

――そもそも「RIZIN」の煽りVTRで一番使われてるのはワンチャローン戦。あれキックルールの試合ですからね。

 そうですよね。「ああいう試合を毎回やれ」はさすがに無理かもしれないですけど(苦笑)。でも、見てる人にインパクトの残る試合を見せる自信はあります。この前の試合(イグナシオ戦)でもかなりいろいろな技を出して倒したんで。いつもはダウンを奪うと「いくぞ!」って一気に倒すんですけど、今回はダウンを序盤に取って、相手の腹も効いてるのが分かったんで「絶対に倒せる」と思って、いろいろな技を出して倒しました。

――感覚としては自分の中の「技の引き出し」を開けていく感じなんですか?

 そうです。

――試合前に「あれやろう、これやろう」は考えてました?

 考えてないです。その場です。やっぱり練習してきたことが全部出ますね。

キックボクシングは「レール」がない 自分で作っていくから面白い

今後の未来像は「白紙」。直感型でできることをやっていく! 【茂田浩司】

――まだ19歳。将来的にボクシングを選ぶのか、MMAにいくのか。それともキックボクシングを続けていくのか。自分の未来像は見えていますか?

 白紙です。僕は、できることならキックで、というのはありますけど。結構、直感型なので「海外に行こう」と思ったら海外に行くかもしれないですし。ただ、ボクシングなら井上尚弥選手とか海外にもいろいろな選手がいますし、MMAだと「UFC」がありますよね。キックは何があるの、って思うんですよ。
 そういう上位概念がないじゃないですか。そういうのを作っていかないと、今だけ盛り上がっていてもその先が続かないと思うんで。

――ブシロードの木谷高明取締役は「KNOCK OUT」の設立会見で「キックの上位概念を作る」と言ってましたね。

 そうなんですね。「KNOCK OUT」はいいと思うんです。それも1年、2年のことじゃなくて、きっと5年、10年先を考えていると思うんで。
 だから今、僕は結構楽しいですよ。ボクシングならこの道、MMAならこの道っていう決まった「レール」がありますけど、キックボクシングにはないんで。自分でこの先の道を新しく作っていかないといけないんで、それほどワクワクするものはないですね。

――東京ドームでキックボクシング、とか、みんなが憧れる夢の舞台を作りたいですね。

 できないことはないと思いますし、東京ドームでも絶対にやりたいですね。

――最後に、自伝「覚醒」はどんな人に読んでもらいたいですか?

 この本は、僕と同じようにスポーツや何かほかのことでも、本気で打ち込んでいる人とか、スポーツをやっている子供のお父さんとかお母さんにも読んでもらいたいですね。この通りにやれば絶対強くなれるってわけじゃないですし、厳しい内容かもしれないですけど(苦笑)、あくまで参考にしてもらえればうれしいかなと。

 あとは、小中学生が読書感想文で書いてくれたらなー、と思いますね(笑)。小中学生は考え方が無限じゃないですか。「覚醒」を読んでみて、ちょっと感想を書いてほしいです。その感想文をぜひ読んでみたいです。

――大みそかの「RIZIN」については?

 2回目の大みそか、年末なんで「お祭り」だと思ってやります。いつも以上のパフォーマンスをして、キックボクシングで「RIZIN」に衝撃を走らせたいです。テレビで放送されるんで、格闘技に興味のない人にも「おお!」と言わせるような試合をして「ガキ使」に負けないように(笑)。絶対にやってやろう、って思ってます。

――トーナメントの決勝戦は確実に生中継になるでしょうね。

 そうですよね。頑張ります!

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著者プロフィール

94年から週刊の情報誌でスポーツページを編集。野球、サッカー、NBA、テニス、F-1など様々な競技や選手を取材。96年からフリーに。99~02年「ゴング格闘技」編集ライター。現在は格闘技、お笑い、教育、健康、舞台・テレビ、政治・時事などを幅広く取材・執筆中。

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