宇野昌磨、抜群の安定感を支える反復練習 転倒もSP100点超え、更なる成長への渇望

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「もっと成長したいし、挑戦したい」

8日のフリーでは4回転サルコウに挑戦する意向。安定と挑戦を両立させながら、さらなる成長へ貪欲な姿勢を見せる 【坂本清】

 今大会に向けて、宇野はここ3回ほど失敗が続いていた4回転フリップの感覚を取り戻すために、あえて3回転を多く練習していたという。

「体の負担にならないジャンプを多く跳ぶことによって、感覚をつかめるんじゃないかと思って……。3回転フリップでも4回転の調整ができると思うし、そういう基礎的なジャンプの練習を多めにしました」

 その効果はしっかりと演技に反映された。また納得がいく練習を積めたという手応えは、心の安定にもつながる。宇野は演技後にこう振り返った。

「久々に試合で緊張しなかったです。最近はいつも以上の力を出さないといけなかったんですけど、今回はいつも通りにやればいいという気持ちで、本当に練習のような感じで演技ができました。良い試合ができたというより、良い練習ができたなとあらためて実感しています」

 SPの演技には一定の満足感を示したものの、今季の自身の出来については不満もあるようだ。

「シーズン最初(ロンバルディア杯)に4回転サルコウを決めてから、一度も成功していないし、取り入れられていない試合もあります。今大会ではフリーで入れていきたいと思いますし、自分はもっともっと成長したい。今季も成長する1年にしたいということで、どんどん挑戦していきたいと思っています」

安定感を生み出すサイクル

 挑戦しながら、安定感を維持するのは非常に難しい。本来は相反するものだからだ。挑戦にはリスクが伴う。リスクは不安定の中に存在する。ただ、宇野はシーズン開幕当初にこんなことを言っていた。

「たとえ難しい演技構成であっても、自分にとってその構成が当たり前になるまで何度も練習していくつもりです」

 現時点では難しくても、それを繰り返し練習していけば、いつか簡単にできるようになる。振り返れば、かつて跳べなかったトリプルアクセルや4回転トウループも、今では「跳べるジャンプ」として、宇野の計算に入っている。新しい挑戦を試み、それができるようになるまで反復練習を続ける。そして安定してきたら、その状態を維持しつつ、また新たな挑戦に乗り出す。そのサイクルができているから、宇野は着実にレベルを上げているのだ。

 宇野にとっては1年1年があくまで通過点。「とりあえず上っていきたいということしか考えていないです。ゴールはまだ先で、何をしたいのかはよく分からないですけど、ただただもっとうまくなりたいです」。

 今大会のフリーで挑むという4回転サルコウは、今の宇野には確実に跳べるジャンプではない。しかし、いつかは当たり前に跳ぶジャンプになっているのだろう。群を抜く宇野の安定感は、こうした挑戦と反復練習によって成り立っている。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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