フォーミュラEが12月2日に開幕 スポット参戦の可夢偉「上位を狙いたい」

田口浩次

11月22日の会見でフォーミュラE参戦への意気込みを語った小林可夢偉 【写真は共同】

 F1の2017年シーズン終了とターンオーバー(入れ替わり)するかのように、フォーミュラEの第4シーズン(17−18シーズン)が12月2日に香港で開幕する。

 フォーミュラEとは、バッテリーとモーターを動力源に専用設計された電気自動車のフォーミュラカーで行われるFIAが認可した世界選手権だ。最大の特徴は、多くのモータースポーツが基本的には専用サーキットで3日間かけて開催されるのに対し、フォーミュラEは排気ガスやエンジン音が発生しないメリットを生かして、基本的に市街地で開催されるイベントであること。

 今回は香港で2日に開幕戦、3日に第2戦が行われるが、多くのレースは1日開催となる。また、今シーズンは全14戦を予定。香港だけではなく、イタリアのローマ、フランスのパリ、米国のニューヨークにカナダのモントリオールと、世界的な観光都市ばかり11都市で予定している。

 そんなフォーミュラEなのだが、じつは14年の第1シーズンでは開幕戦に元F1ドライバーで今年インディ500ウイナーとなった佐藤琢磨がスポット参戦したり、元F1ドライバーの山本左近が15年の第2シーズンでスポット参戦したりと、日本人の参戦も過去にはあった。

 そして、11月15日に発表となったのが、元F1ドライバーの小林可夢偉が、フォーミュラEチームのひとつ、MS&ADアンドレッティ(米国)から第1戦と第2戦の香港大会にスポット参戦するというもの。22日には本人が出席し、都内で参戦発表の記者会見が行われた。

以前から参戦に興味

 現在、可夢偉はトヨタワークスドライバーとしてWEC(世界耐久選手権)に参戦。国内最高峰フォーミュラであるスーパーフォーミュラにも香港資本のKCMG(エンジンはトヨタを使用)から参戦している。今回のフォーミュラE参戦にあたっては、すでに契約済みのレーススケジュールを優先する必要があり、17年、自身が参戦するレーススケジュールがすべて終了していることから、トヨタの了承も得られて今回の話が実現したという。ただ、可夢偉本人は、以前からフォーミュラEに対して興味を示していた。

「もともとフォーミュラEのCEOであるアレハンドロ・アガグ氏とは知り合いで、彼がフォーミュラEをスタートさせて来日していた頃から『やらないか?』とは誘われていました。本格的にフォーミュラEにチャンスはないものかとリサーチを始めたのは第3シーズン開幕あたりで、ただ、僕自身フォーミュラEの知識を得る必要があって、実際に交渉が始まったのは今年の夏前くらいでした。人の手を借りて動き出し、その時点では他のチームと交渉していましたが、スケジュール的にテストに参戦する機会が無くて、なかなか実現しなかったけれど、今回、最後の最後にアンドレッティとの話が浮上したという感じです。多くの人に協力してもらって感謝しています」

 参戦までの経緯を語った可夢偉。周辺からの話によれば、10月2〜5日にスペインのバレンシアで開催されたフォーミュラEのプレシーズンテスト。ここに本来であれば可夢偉が最終ドライバー選考に参加する方向で交渉していたが、さまざまな要因から参加に至らず、交渉をしていたチームでの参戦が流れた。うわさでは、最終ドライバー選考をこのプレシーズンテストで行ったベンチュリが可夢偉の交渉先だったのでは、と言われている。結局、ベンチュリはジェームス・ロシターらをテストさせ、最終的にメルセデスのDTM(ドイツツーリングカー選手権)ドライバーを2名起用した。
 そのような経緯があった可夢偉だが、フォーミュラEのポテンシャルについてはこう口にしている。

「僕自身ベルリンに行って、フォーミュラEにポテンシャルを感じました。フォーミュラEは香港を始め、都市で開催するレースが多い。人は集まると思うので、観客数は心配していないです。それよりも、フォーミュラEは多くの自動車メーカーが参戦を決定しているカテゴリーじゃないですか?(※第4シーズンはアウディ、ルノー、ジャガーがワークス参戦。第5シーズンからBMWが、第6シーズンからメルセデスとポルシェが参戦することが決定している) 今後はメーカーが参入してきて、発展していくと思います。その一方で、僕はトヨタドライバーで、いまは個人で交渉できるけど、この先自動車メーカーがそろったら、なかなかメーカードライバー以外が挑戦することは難しくなる。正直、F1と比較したらフォーミュラEはまだまだ小さな村です。でも、小さいからこそ小回りも利く。いまは(比較的自由に交渉ができる)最後のチャンスなんじゃないかな」

 レースに限らず興行やイベントが発展し規模が大きくなると、ワークスやスポンサーなどの力が大きくなる。しかし、それはそのカテゴリーが発展している証拠でもある。

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