“堀カラー”でもぎ取った、浦和のACL4強 巧みな川崎攻略法で実現した逆転劇
分水嶺となった車屋の退場
一時は1−4という状況から、浦和が逆転でACL4強を決めた 【赤坂直人/スポーツナビ】
一手打つたびに浦和レッズは姿を変えて、攻勢を強めていった。その圧力は1人多いとはいえ、J1屈指の攻撃力を誇る川崎フロンターレに、カウンターの機会すら与えないほどだった。
川崎が3−1と先勝して迎えたACL(AFCチャンピオンズリーグ)の準々決勝、埼玉スタジアムで行われた第2戦は、19分に川崎のエウシーニョが先制ゴールを奪い、合計スコアは4−1と大きく開いた。
35分に興梠慎三のゴールで浦和が1点を返したが、川崎の優位は変わらない。ゲームの分水嶺(れい)となったのは38分、川崎のDF車屋紳太郎の退場だ。興梠の顔に足の裏を向けて競り合ったプレーが危険とみなされ、一発退場を宣告されてしまう。
運動量を求め、中村憲剛を下げた鬼木監督
1人減ったことで運動量が必要と考えた鬼木監督(右)。中村憲剛を下げる決断した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
「1人減ってしまったので、運動量が必ず必要になってくるだろうと思った」と鬼木監督は説明した。そのため、最もベテランである36歳の中村を下げたというわけだ(42分に田坂祐介と交代)。
思い出したのは、1994年ワールドカップ米国大会のイタリアだ。ノルウェー戦の前半にGKジャンルカ・パリュウカが退場になった際、アリゴ・サッキ監督はためらうことなく、前年にバロンドールとFIFA(国際サッカー連盟)最終優秀選手をダブル受賞していたトップ下のロベルト・バッジョをベンチに下げた。その理由も、鬼木監督と似たものだった。
カウンターを狙えなくなった川崎
65分には大島も下がったことで、川崎はカウンターのパスの出してを失った 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
ただし、考慮しなければならなかったのは、大島僚太が直近の試合で足首を負傷し、フル出場が難しい可能性が高かったことだ。
川崎にとって理想の展開は、3点が必要な浦和が前掛かりになったところを、ロングカウンターで仕留めることだろう。しかし、中村が前半のうちにピッチから去り、「前半が終わって足首にかなり痛みが出ている状態だった」(鬼木監督)という大島も65分に下げざるを得なかったため、カウンターを発動させるパスの出し手がいなくなってしまった(代わって出場したのはエドゥアルド)。
中村と大島が下がったことで「思い切りよく高い位置を取れた」と振り返った槙野(赤) 【(C)J.LEAGUE】
「僕ら(槙野と森脇良太)が上がると後ろにスペースができるので、ボールを拾われて憲剛さんや大島選手に渡ると、ワンクッション、タメを作られてしまう。そうなると、なかなか上がれるチャンスはなかったけれど、あの2人がいないことで、思い切りよく高い位置を取れたし、ゴールに向かうプレーを数多く出すことができましたね」
大島のフル出場が難しい可能性があった以上、先に大島を下げて中村をできる限り(可能なら90分)引っ張る。あるいは、2人とも下げるなら、1トップの小林悠と右サイドハーフの家長昭博の位置を入れ替えて、家長のキープ力とパス、小林のダイアゴナルの飛び出しでカウンターを狙いたかった。
問題は、中村を下げるべきだったのか否かではなく、カウンターの手段を持てず、一気呵成(かせい)に攻める浦和の喉元にナイフを突き立てるようなゲーム運びができなかったことだろう。