監督就任へ、ランパードが描く第2の人生 重視するのは心構え、ハードワーク、育成

杉山孝

活躍の秘訣は、舞台裏でのハードワーク

ランパードは自身の経験から、「ハードワーク」の重要性を語る 【スポーツナビ】

 練習の重要性について、他の場面でも語っていた。日本のMFが得点力を上げるには何が必要かと問われると、2003年から10シーズン連続でリーグ戦2桁得点を挙げた男は、こう語った。

「基本的に2つの要素があると思います。1つは確かに、『点を取るための才能』です。それは確かだけれども、何よりも先に来るのは『ハードワーク』と『練習』です。得点を決めてピッチ上を上下動できるように、僕も裏では体力強化に努め、たくさん練習をしていました。それはイングランド人でも日本人でも、世界中のどこのMFであろうと関係なく、そういうものなのだと思います。僕にとっての秘訣は、舞台裏でのハードワークでした」

 トッププレーヤーとしての経験を生かし、「選手時代に多くの監督の下でプレーして、いろいろな監督の良い面も悪い面も見てきました。その中で自分なりの監督像をつくっていければと思っています」とランパードは話す。一方、指導者として選手と接するにあたり、鍵となる時期があることも心得ている。チェルシーではU−18の練習にも参加したランパードは、「若手の育成に、すごく関心があります。グラウンドでのプレーのみならず、人間としての育成にも非常に力を入れていきたいと思います」と、話している。

 そんな指導者の卵にとって、U−17やU−20イングランド代表の年代別ワールドカップ(W杯)制覇は、大きな意味を持つようだ。元イングランド代表の口から期待する新星の名を聞きたがる声をけん制しながら、こう話す。

「特にU−17など、ユースレベルで成功を収めたことにイングランドが沸き上がっているのは、正しいことだと思います。そういった選手たちに今期待されることは、チェルシーでもどこでも、ファーストチームで経験を積めるかどうかです。ユースとファーストチームの間のプレーの差を埋めようと努力して、さらにフル代表に入っていくことが大事です。でも、彼らはすでにハードワークを始めていることだろうと思います。選手たちは、この瞬間を本当に楽しむべき。

 僕らもW杯を制するチームを擁していることを誇るべきです。でも今の彼らは自分たちのクラブに戻って、今後の2、3年の成長を見据えて、懸命に仕事に取り組まねばなりません。できればイングランドが4年か5年、あるいは6年後にその恩恵を受けることを願っています」

リーダーとして成功する秘訣は3つ

リーダーとして成功する秘訣は「人間性」「姿勢」「謙虚さ」。重要視するものは一貫している 【写真:Action Images/アフロ】

 この日のサッカー教室も、ランパードに語らせれば、子どもたちにとって大事な時期である。自身は4歳ほどでボールを蹴り始めたといい、子どもの年代で気をつけるべきことは、「こういう教室では、子どもに頑張らせようとしすぎたり、何かを強制してしまいがちです。子どもたちには楽しませる必要があるし、子どもたちは自分のやり方を自分で見つけ出します。その後、どこかのポイントで練習に取り組む必要が出てくるのです」。元プロ選手の父に課された厳しい練習を思い出しながら、そう話した。

 心構えの重要性。それはこの日のランパードのコメントに一貫して表れている。長らくチェルシーのキャプテンマークを巻いた経験から、リーダーとして成功する秘訣についてこう語った。

「僕の経験から3つ挙げましょう。まずは『人間性』です。高いレベルのパフォーマンスも必要ですが、チームをまとめる上で、人格者であることが非常に大事だと思います。2つ目が『姿勢』です。キャプテンがプレーにどれだけ没頭しているかを目にすることで、あれくらいのレベルになりたい、と周囲の選手も刺激を受けて強くなっていくものだと思います。3番目が『謙虚さ』です。キャプテンであれ1人の選手であれ、僕は謙虚な姿勢でハードワークしている人を非常に尊敬してきました。エゴを前に出しすぎないことが大事だと思います。この3つが、キャプテンにとって大事なことですね」

 心構え、練習、育成年代。ランパードの話には、重要視するものが一貫して表れている。

「監督になるのならチェルシーの監督になりたい」

「チェルシーの監督になりたい」というレジェンドは、どんなキャリアを歩むのか 【スポーツナビ】

 そして、もう1つ。ランパードの個人的な思いの中に、常に通っている1つの芯がある。前述のディレクター就任のうわさについて「僕はチェルシーの人間です。何らかの形で長くこのクラブに関わっていけたらとは考えるけれども……」と話していた男は、自身の夢について明言した。

「当然長くチェルシーでプレーをしてきたのだから、監督になるのならチェルシーの監督になりたいと思っています。でも、それが簡単ではないことも分かっています。良いコーチ、監督であることを示していくことだけが、いつか夢を実現させることにつながると思っています」

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著者プロフィール

1975年、ジーコとストイコビッチと同じ3月3日生まれ。新聞社で子供からプロまで5年間、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を務め、2012年7月まで同サイトの日本での確立・発展に尽力。現在はライター・翻訳者・編集者としてサッカーとスポーツを追い続ける。サッカーW杯取材は現在のところ02年、10年の2大会。

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