監督就任へ、ランパードが描く第2の人生 重視するのは心構え、ハードワーク、育成

杉山孝

2月の引退後、初来日

2月に引退したランパードが来日。英国大使館でサッカー教室などを行った 【スポーツナビ】

 前日に来日したばかりにもかかわらず、疲れた様子も見せずに芝生を踏みしめた。子どもたちと一緒にボールを蹴る姿は、世界中が目にしてきたものと変わりない。まだ元選手と呼ぶには早すぎる風情で、フランク・ランパードが日本の秋の風に吹かれていた。

 長年所属したチェルシーと、同クラブのスポンサーである横浜ゴム株式会社の主催イベントに参加するため11月上旬に来日したランパードは、子どもを対象としたサッカー教室などの活動を行った。英国大使館で行われたサッカー教室では、ブリティッシュスクールと東京のクラブチームから参加した40人ほどの子どもたちに、「ドリブルの時には下を向かず、視野を確保した方がいいよ」などと声をかけながら、体を動かし続けた。

サッカー教室では、子どもたちにやさしく声をかける姿が印象的だった 【写真:ロイター/アフロ】

 プロのピッチを離れたのは、今年2月のこと。体のラインに変わりがないのは、引退から日が浅いことだけではなく、「まだフットボール的な心構えだから」という健康的な食生活も影響しているという。中庭での囲み取材、さらに続いた駐日英国大使と並んでのトークセッションと、どんな質問に対しても誠実に、時にユーモアを交えながら、知性を感じさせる応対を続けていた。テーブルの上に乗った水で喉を潤しながら、もちろん大使のグラスを満たす気配りも忘れずに、キャップ数106を誇る元イングランド代表が自らとフットボールについて語った。

 このセッションの数日前、ランパードの名が英国メディアの見出しを飾った。退任することになったマイケル・エメナロの後任として、チェルシーのテクニカルディレクターになる可能性が報じられたのだ。このニュースに関する質問にも、ランパードは「単なるうわさですね。イングランドでは日常的なこと」と、自身を取り巻く状況について落ち着いて語った。

「最高の監督はジョゼ・モウリーニョ」

コーチングライセンスを取得しているランパード。最高の監督はモウリーニョ(右)だという 【写真:ロイター/アフロ】

 ランパードは現在、英テレビ局「BTスポーツ」で解説者を務めている。だが、最終目標は他にある。監督として、フットボールの最前線に戻ることだ。「試合を分析したりしています」と語るメディアの仕事と並行して、「FA(イングランドサッカー協会)とチェルシーの協力により、監督になる準備をしています。コーチングライセンスを取得するのに1年から1年半かかるかと思います」と、次のステップに向けての動きも進めている。

「20年間選手としてやってきましたが、良い選手がそのまま良い監督になるわけではないということも分かっています」。テストを担当したクラブドクターも驚くほど高いIQ値をたたき出した逸話で知られる39歳は、そう話す。だが、長年トップの世界で積んだ経験が生きることも確かだろう。共に仕事をした中でベストだと思う監督、またこの人の下でプレーしてみたかった監督は誰かとの質問に、こう答えた。

「最高の監督はジョゼ・モウリーニョでしょうか。カルロ・アンチェロッティも素晴らしい監督でしたが、彼が来た時点でチェルシーのプレーは確立されていました。モウリーニョはそれまでの僕よりも一段高いレベルへ引き上げてくれた監督でした。フットボール的なことだけではなく、自分にはやれるんだと思わせてくれたおかげで、違う自分になれました。

 この人の下でプレーしてみたいと思ったのは、とても敬愛してきたアレックス・ファーガソンです。マンチェスター・ユナイテッドの監督として、非常に長いキャリアを重ねられた中で、選手にたくさん練習を課する厳しい監督だったと聞いています。僕もそういう厳しい練習をすごく大事にしてきたので、問題なく適応できたと思います。彼の本もたくさん読んでいるし、講演もたくさん聞いています。非常に尊敬する監督です」

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著者プロフィール

1975年、ジーコとストイコビッチと同じ3月3日生まれ。新聞社で子供からプロまで5年間、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を務め、2012年7月まで同サイトの日本での確立・発展に尽力。現在はライター・翻訳者・編集者としてサッカーとスポーツを追い続ける。サッカーW杯取材は現在のところ02年、10年の2大会。

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