台湾戦快勝は稲葉監督の決断にあり 選手の特徴を見極めた打順変更

中島大輔

負けられないプレッシャーとの戦い

「負けられないプレッシャーがあった」という外崎(写真右)が2回に先制セロ本塁打。ベンチで稲葉監督に笑顔で迎えられた 【写真は共同】

 台湾を8対2で下した野球日本代表(侍ジャパン)の選手たちが東京ドームのミックスゾーンを引き上げていく中、最後の方に現れた“打のヒーロー”は、囲み取材の途中で思わず安堵の表情を浮かべた。

「(韓国戦とは)違う感じの緊張感でしたね」

 2試合続けて「6番・レフト」で先発出場し、2回に見事な右打ちで先制本塁打を突き刺した外崎修汰(埼玉西武)は、決勝進出を決めた台湾戦をそう振り返った。16日の韓国戦は「初戦独特の不安」に包まれたのに対し、18日の台湾戦では「負けられないというプレッシャーが違いました」という。

左腕対策として中村、松本を起用

「アジア プロ野球チャンピオンシップ」初戦の韓国戦を延長10回、8対7で勝利した侍ジャパンだが、2戦目の台湾戦に敗れれば、決勝進出が途絶える可能性もあった。そんな一戦を8対2で勝利することができた要因は、選手たちが持てる力を普段通りに発揮したことと、稲葉篤紀監督の打順変更が挙げられる。

 当初は好調の西川龍馬(広島)を2番に昇格させ、源田壮亮(西武)を8番か9番に持っていこうと考えていた指揮官だが、前日の夜に台湾の先発が左腕の林政賢(リン・ジュョンシェン)と発表されると、大幅な打順変更を決断する。

「左ピッチャーで外のボール(ストレート、ナックルカーブ、チェンジアップ、スライダー)が多くて、中村(奨吾/千葉ロッテ)選手のスイングが合うだろうとセカンドで使うことを決めました」

 さらに左腕の林政賢は牽制がうまく、二盗を成功させるのは難しい。そこで今季、ペナントレースで21犠打を決めている松本剛(北海道日本ハム)を2番に抜てきした。

「やりたいことはやれている」

本職のショートで出場した京田。5回、今大会初安打が2点タイムリーとなった 【写真は共同】

 そんな指揮官の狙いがはまったのは、1点リードで迎えた中盤以降だった。

 まずは5回、外崎のセンター前安打と西川のバント、二つの盗塁などで2死二、三塁のチャンスを作ると、ここまで2試合で6打数無安打だった京田陽太(中日)がライト前に2点タイムリー。韓国戦と同じ1番で起用されたが、この日のポジションは慣れないセカンドではなく、本職のショートだった。

「ショートでのスタメンだったので、いつも通りに試合に入れたと思います。前の打席と同じやられ方はダメだと思ったので、変化球を頭に入れながら真っすぐを待って対応できました」

 3対0で迎えた7回には、1死満塁から松本がライトへの2点タイムリー二塁打でダメ押し。

「相手投手の王鴻程(ワン・ホンチェン)は真っすぐが速いという情報があったんですけど、変に速いと思いすぎないで、自分のスイングをしっかりしようと思ったら、たまたまいいところに飛んでくれたので良かったです」

 投手陣は先発の今永昇太(横浜DeNA)が6回を無失点、12奪三振と圧巻の投球を見せると、7回以降は4投手のリレーで逃げ切った。打っては12安打と投打がかみ合っての勝利に、稲葉監督は会見で満足そうに振り返った。

「やりたいことはやれています。スチールも仕掛けられていますし、今日も外崎選手がスキを突いて三盗をしてくれました。8割くらいはやりたい野球をできていると思います」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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