台湾戦快勝は稲葉監督の決断にあり 選手の特徴を見極めた打順変更

中島大輔

若き侍ジャパンに見える向上心

6回無失点で12三振を奪った先発・今永。圧巻のピッチングだったが、王柏融への失投へを口にするなどあくなき向上心を見せた 【写真は共同】

 韓国に続いて台湾を撃破し、2連勝で決勝進出。今季のペナントレースで活躍して侍ジャパン入りを果たした選手たちは、独特の緊張感に包まれる中、短期決戦で確かな成長を実感している様子だ。高卒6年目の今季、日本ハムで115試合に出場した松本はこう話した。

「負けたら終わりという中でみんなやっています。チーム一丸となっている感じがするし、韓国戦でベンチにいても誰一人あきらめていないと感じていたので、それはシーズンにつながると思います」

 大卒3年目の今季、135試合に出場した外崎はこの日、猛打賞と三盗で期待に応えた。

「シーズン通りに試合に入っていけていますし、消極的になることなく、どんどん振っていけているので、自分にとってもプラスになると思います。こんなに緊張感のある試合はなかなかないと思いますし、その中で結果がついてきているのは来年にもつながると思っています」

 大卒2年目のシーズンにチーム最多の11勝をマークした今永は、台湾戦で今季の集大成のようなピッチングを披露しながら、反省点を口にした。

「最後のイニング(6回)に王柏融(ワン・ボーロン)選手に内野安打を打たれたんですけど、田村(龍弘/ロッテ)のミットは低めに構えていて、自分が欲を出して強引になってしまいました。一振りで流れを変えられる選手に対して投げる球ではなかった、と。欲を出さないピッチングをこれから先は続けていければと思います」

 ストレートを内外角にしっかり制球し、4回までに11奪三振と完璧な投球を続けていた中、あえて最後のミスを口にする姿勢は向上心の表れだった。

ファンの力を借りて決勝戦を戦う

左腕の林政賢対策として2番に起用された松本は7回に2点タイムリー。この緊張感の中での戦いは将来の大きな財産となる 【写真は共同】

 若い選手たちがペナントレースと同じように躍動し、アジアのライバルに2連勝。一戦ごとに異なるプレッシャーを感じて戦いの場に立てることは、若手にとって何よりの財産だ。最後に決勝で迎えるのは、韓国との再戦。稲葉監督は、3日前とは違った戦いになると見ている。

「韓国は一つ負けているので必ず倒しにきますので、それ以上の気持ちを出していかなくてはいけないと思います。ここは日本なので、ファンの皆さんの力を借りて、みんなで戦っていきたいと思います」

 わずかな期間で成長を遂げる若き侍ジャパンは、最後の最後、決勝でこれ以上ない相手を迎え撃つ。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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