大学球界に新時代到来の予感!? 日体大が制した神宮大会を振り返る

高木遊

ドラフト候補の右腕2人が好投

今秋の神宮大会大学の部は、来年のドラフト上位候補である松本、東妻という2人の右腕が好投した日体大が37年ぶり2回目の優勝を飾った 【写真は共同】

 日本体育大(首都大学野球連盟)の37年ぶり2回目の優勝で幕を閉じた第48回明治神宮野球大会・大学の部。来秋のドラフト候補に躍り出た新星の活躍や時代の流れに沿ったチーム作りをする大学の躍進が目立ち、新時代の到来を予感させた。

 日本体育大と星槎道都大(札幌学生野球連盟)による決勝戦となった今大会。東京六大学野球と東都大学野球の両連盟とも決勝に進出できなかったのは2005年以来7回目となったが、両校とも最大の勝因は投手力だ。

 日本体育大は松本航(明石商高)と東妻勇輔(智弁和歌山高)の両3年生右腕が3試合をわずか1失点に抑えた。松本はキレのある球と制球力、東妻は150キロを超えるストレートで押していく投球が光る。ともに来秋のドラフト候補に名を挙げており、切磋琢磨できる同期がいることは大きい。

気迫の東妻に闘志秘める松本

 東妻は今大会初戦の九州共立大戦で7回から延長タイブレークの10回までリリーフ登板。緊迫した試合展開で、時に「オラァァァ」と声を上げて投じるなど気迫を込めて、ストレートや曲がりの大きいスライダーで打者11人から9三振を奪った。中1日で先発した決勝戦では、一転して打たせて取る投球を見せて、三振はわずか4個ながら9回を105球で投げ切るクレバーさを見せた。

 松本は球速こそ140キロ前半だったが、伸びのあるストレートにツーシームやスプリットなどを左右高低へ巧みに投げ分け、九州共立大戦は6回1失点、準決勝の東洋大戦では大学球界屈指の強力打線を相手に4安打完封を果たした。東妻と対照的に話し口はほのぼのとした印象を受けるが、「気迫がすごいので気持ちで負けてはいけないと思いました」と、名将・高橋昭雄監督に有終の美を飾らせたい東洋大の気迫にも屈しなかった。秘めたる闘志は相当なものがありそうだ。

星槎道都大は北海道勢初の決勝進出

北海道勢初の決勝進出に大きく貢献した星槎道都大の左腕・福田。 【写真は共同】

 また星槎道都大を準優勝に導いた170センチの小兵左腕・福田俊(横浜創学館高)も活躍が目立った。140キロ台のキレのあるストレートにチェンジアップなどを織り交ぜた投球で全3試合に先発して18回3分の1を投げて自責点はわずか2点。一躍来秋のドラフト候補に名乗りを挙げた。

 星槎道都大は福田を含めて甲子園出場者はほとんどいないが「だからこそのハングリーさや素直さがあって、選手が伸びていきます」と山本文博監督。雪の多い冬場での自主的な振り込みなどにより打力が強化されたことも北海道勢初の全国大会決勝進出に欠かせなかった。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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