大学球界に新時代到来の予感!? 日体大が制した神宮大会を振り返る

高木遊

下級生も順応しやすい組織作り

日体大野球部「体育会イノベーション」と称する改革に取り組み、組織を大きく変えた 【写真提供:日本体育大学硬式野球部】

 日本体育大を優勝に導いた古城隆利監督は就任9年目。それまでは2部降格こそないものの、成績の波が大きかった。そこで一昨年冬から「大学スポーツで勝ち続けているチーム」を参考に組織作りを変えた。

 まず1つ目は、2012年に明治神宮大会で創部7年目ながら優勝を果たし、以降も春秋どちらかではリーグ優勝を続けている桐蔭横浜大だ。

 もともと親交のあった齊藤博久監督のもとを訪ねて、練習を見学。各部門の責任者となる部員同士の活発なコミュニケーションを見て、日本体育大でも各部門に部員の幹部を置いた。その中でミーティングをさせたり、首脳陣と幹部が意見交換をするなど権限を与えた。これは体育大学で指導者志望の部員も多いだけに、浸透は早かった。

 次に取り入れたのが、「体育会イノベーション」と称する改革だ。これは大学選手権8連覇中の帝京大ラグビー部が行っている取り組みを参考としたもので、それまで下級生が行っていた雑用を上級生が行うようにした。これにより下級生は新しい環境により早く順応でき、上級生は行動で下級生に模範を示した。この成果が、今大会全試合で1年から4年の各学年の選手がスタメンに名を連ね、野手陣のヒーローが日替わりだったことからも、その効果は明白だ。

部内リーグの導入で成績を数値化

下級生もスタメンで活躍した日体大。全試合4番に座った高垣は1年生だった 【写真は共同】

 また、メンバー外の選手を数チームに分けて試合を行う部内リーグも数年前から導入しており、ここで全ての成績を数値化。これに担当の学生コーチの意見も加えて、1軍の昇降格を決めて競争を活性化させた。今大会で2番を打った坂本耕哉(松阪高)は一般入試からの入部で3軍からスタート、5番を打った谷津鷹明(向上高)は1度降格を経験しながらも部内リーグで結果を出して1軍復帰を果たした選手の1人だ。

 この部内リーグは初戦で慶應義塾大を破る金星を挙げて4強入りした環太平洋大も取り入れており、就任5年目の野村昭彦監督は「頑張れば報われるシステムを作ろうと思ったんです」と説明していた。

各地で力をつける国公立大学

 かつての大学野球は、東京六大学野球や東都大学野球など一部強豪リーグの名門校の“選ばれた選手”を中心に鎬を削ってきたが、現在は地方を含めた各校にチャンスが広がってきた。前述した新興校や日本体育大のように多くの部員に活躍のチャンスや部内での役割が与えられるようになってきた。

 また、今秋は全国大会出場こそなかったが、東京大が東京六大学野球で15年ぶりの勝ち点を獲得し、大阪市立大が全国大会出場まで1勝と迫るなど、各地で国公立大も力をつけてきている。

 当然ながら20歳前後の身体的・精神的成長は大きい。大学野球は決して“選ばれた選手”だけで行うものではなく、それぞれの部員が目的意識さえ強く持てば、花が開きやすい環境となってきたと言えるだろう。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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