中量級の高い壁に挑む日本人ボクサー 小原、近藤らが切り拓く世界への道
低酸素ルームトレーニングでスタミナが向上
低酸素室で負荷をかけ、自転車こぎ、ボートこぎのマシーンを使ったインターバルトレーニングを週3回から4回こなしてきた 【船橋真二郎】
前嶋孝・専修大学名誉教授が日本で初めて開発し、スピードスケート界の先駆者・黒岩彰氏もトレーニングしたという低酸素室で負荷をかけ、自転車こぎ、ボートこぎのマシーンを使ったインターバルトレーニングで週3回から4回、継続的に10月下旬まで鍛えてきた。
効果はすでに実感している。スパーリングなど、ラウンド終盤20秒の体力の違いは明らかで、1分間のインターバルでの回復も早くなったという。何より効果的に下半身が強化され、「足の踏み込みが強くなった」ことでパンチ力が増した。元来がスピードを生かした技巧派の近藤が大きなグローブを使用し、ヘッドギアも着用するスパーリングでパートナーを倒すようになったというのだ。
あとは「自分を信じること、自分はできると信じることが一番」と近藤は言う。
再び世界を見据える小原 国内中量級トップの意地
この8月に1階級上のウェルター級のアジア・パシフィック王者になった小原。国内中量級トップとして再び世界に挑んでいくつもりだ 【船橋真二郎】
自ら手強い対戦相手を希望し、再起から2戦はウェルター級でKO率の高い東洋圏の選手と戦った。痛烈TKO負けの記憶が残る初戦では、恐怖心が一瞬よぎることもあったというが、「その恐怖心が必要」と小原。ディフェンス意識をより高く持ちつつ、「自分のフィジカルの強さを信じ、攻撃の良さを信じて、しっかり結果を求めていく」と。
ウェルター級は、いまだ日本から世界王者が生まれていない難関。4団体の王者以外にも、粒ぞろいの強豪が居並ぶ。「待っていてもチャンスが来る階級じゃない」という小原は来年、必要があれば海外に出て、世界ランカー相手の勝利でアピールし、チャンスを手繰り寄せたいという。そのためにも12月14日に後楽園ホールで予定される次戦、「壁ではなく、ドア」と表現する日本上位ランカーとのWBOアジア王座の防衛戦は「力の差を見せるとまでは言わないけど、結果的にそうなる」と国内中量級トップのプライドを隠さなかった。
難しい階級だからこそ得るものも大きい
10月22日には、次は必ず結果を出すと信じていた東洋大学の同級生、村田諒太(帝拳)が因縁にケリをつけ、WBA世界ミドル級王者となった。ミドル級では、1995年12月の竹原慎二以来、22年ぶり2人目の快挙。「自分の強運を信じている」という近藤にとっては、「流れが来ている」という以外にないだろう。
その運をつかむためにできることはやってきた。ロサンゼルスでリピネッツとスパーリングをしたことがある元日本スーパーフェザー級王者の内藤律樹(E&Jカシアス)から情報収集もした。7月に圧倒的不利の予想を覆し、敵地・上海でオリンピック2大会連続金メダリストのゾウ・シミン(中国)を11回TKOで撃破、WBO世界フライ級王座を獲得した木村翔(青木)に自らの姿を重ね、試合の動画を繰り返し見ながらイメージを作り上げた。
日本人にとって、難しい階級なのは確か。だからこそ、価値がある。その壁を突破すれば、返ってくるものは日本のボクシングにとっても、きっと大きい。近藤の吉報を待つとともに、小原の今後にも期待したい。