【ボクシング】階級最強決定戦に勝利したクロフォード ウェルター級昇級で新たな強敵探しへ

杉浦大介

3ラウンドで“あっさり”とKOに成功

4団体統一王者となったクロフォード(写真は16年7月に2団体王者になった当時のもの) 【Getty Images】

 勝利が決まった瞬間、テレンス・クロフォード(米国)は複数回に渡って大きくジャンプし、派手なガッツポーズを見せた。普段は常に冷静な印象のある29歳の“スピードスター”が、これほど喜びを爆発させるとは。大舞台での完ぺきなKO劇には、それだけの意味があったということなのだろう。

 現地時間8月19日、米国ネブラスカ州リンカーンで開催されたプロボクシングのWBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーライト級王座統一戦で、WBC、WBO王者のクロフォードがWBA、IBF王者ジュリアス・インドンゴ(ナミビア)に3回1分38秒KO勝ち。2ラウンドに右ボディでダメージを与えた後、クロフォードはチョッピングレフトで先制のダウンを奪った。3ラウンドには相手が出てくるところに左ボディをカウンターでたたきつけ、34歳のナミビア人はリング上でもん絶。レフェリーが10カウントを数え上げ、少々驚くほどあっさりと、クロフォードはボクシング史でも珍しい4つのメジャータイトル統一に成功した。

「良い気分だ。夢がかなったよ。スーパーライト級で唯一の王者になったことには大きな価値がある」

 米国国内でこの試合を生中継したESPNのインタビューに答え、クロフォードはリング上でそう語った。ヒーローのそんな言葉を聴き、クロフォードの故郷オマハからほど近いリンカーンのアリーナに集まった12121人のファンは大喜びだった。ほとんど完全無欠のまま終わった“ホームカミング”。今後に何が起ころうと、今戦はクロフォードのキャリアの中でも最大級のハイライトとして記憶されていくだろう。

史上4度目の4団体統一戦

 今回のタイトル戦は珍しい4団体統一戦ということで大きな注目を集めた。

 WBA、WBC、IBF、WBOが足並みをそろえた1980年代以降、4つのタイトルがかかったファイトは2004年のバーナード・ホプキンス(米国)対オスカー・デラホーヤ(米国)、05年のホプキンス対ハワード・イーストマン(イギリス)、ホプキンス対ジャーメイン・テイラー(米国)戦のみ。2人の王者がそれぞれのタイトルをかけての“最強決戦”となると、ホプキンス対デラホーヤ戦に続き史上2度目のことだった。

 チャンピオンが増えすぎ、強さの序列が難解になっていたボクシングの世界。そんな業界において、文句無しの“階級最強決定戦”だったクロフォード対インドンゴ戦の分かりやすさは魅力だった。

 それと同時に、過去2戦ではエドゥアルド・トロヤノフスキー(ロシア)、リッキー・バーンズ(イギリス)に完勝して表舞台に躍り出た22戦全勝(11KO)のアフリカンは、今をときめくクロフォードにとっても不気味に思えた。少なくとも序盤ラウンドでは、身長で6センチ、リーチで3センチも上回るインドンゴを持て余すだろうという予想もあった。しかし――。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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