森山監督「涙をエネルギーにしてほしい」 U−17W杯 イングランド戦後の会見

スポーツナビ

イングランドにPK戦で敗れ、落胆する選手たちに声をかける森山監督(赤) 【佐藤博之】

 サッカーU−17日本代表は17日、インドのビベーカーナンダ・ユバ・バラティ・クリランガンスタジアムでU−17ワールドカップ(W杯)ラウンド16のイングランド戦に臨み、0−0からのPK戦の末に3−5で敗れた。

 会見で森山佳郎監督は「ほぼプラン通りの戦い」と試合を振り返るも、「ネットが揺れなかったことだけがプランから外れた」と悔しさをにじませた。また、「極限まで戦った姿に心打たれた」という選手たちに向けては、「涙をこれからの大きな成長のエネルギーにしてほしい」とエールを送った。

素晴らしいハートを見せてくれた

――今日の試合は前半耐えて、後半に相手の足が止まったところを攻めるというプランを遂行できたと思う。試合を振り返って、敗退した率直な心境を。もう1点、若い選手たちが世界を経験してこれをどう未来につなげてほしいと思っているか?

 ほぼプラン通りの戦いで、まずは向こうに(攻めさせた)。最終ラインのところでしっかりと守り切れればと。あまり最初から(ボール)保持率を上げて攻めていくことで、簡単に失点してしまうのは(グループステージ第2戦の)フランス戦で証明された部分です。前半はしっかりと、ボクシングで言えばクリンチしながら(耐えて)、じわじわとこちらにペースを持ってくるというプランでした。

 ラスト20分は絶対いけるという自信があったので、そこでの勝負に持ち込むことができて「さあ、いよいよ」というところだったんですけれど、ひとつネットが揺れなかったことだけがプランから外れたところだったかなと思います。

 まずはもう選手の戦う姿というか、最後まで諦めずにボールを追いかけて本当に極限まで戦ったというその姿に心打たれたというか。本当に素晴らしい選手たち、誇らしい選手たちとの2年半の旅が終わってしまいました。素晴らしいハートを見せてくれたなというところです。格上の相手に対して、日本人の我慢しながら皆で声を掛けながら集中して、声を掛け合って戦って、こっちに流れを持ってくる。組織的な部分は見せることができたんじゃないかと思います。

 負けたということは足りなかったところあるわけで、ゴールにつながるクオリティーというか、ゴールに向かう迫力というかラストのところ。それがこれからの宿題というか。選手たちは全員大泣きしていましたが、その涙をこれからの大きな成長のエネルギーにしてほしいですね。

――ゴール以外はプラン通りという話だが、局面ではピンチがあり、マッチアップでも不利な状況があった。選手の試合中の状況コントロールだったり判断をどう見たか?

 選手たちはリーダーが何人かいますし、ピッチの中でものすごく声が出るというか、「こうやろう、ああやろう」「ここ危ない」「ここ締めろ」「ここズレろ」と、そういう声がずーっと90分間続いた。選手がそれぞれの状況で「いま耐える時」「いま攻める時」という判断を(してくれた)。

 当然、前半は相手の圧力があったわけで、その中でああいうプレーをすることができた。多少は自陣で危ないシーンもありましたけれど、判断としては悪くない。もちろんビルドアップして、あのプレッシャーに対しても崩していけるようなものを持っていけば、もっと攻撃のチャンスは増えてくると思います。現時点の力の差とか、いろいろな環境とかを考えた中で、選手たちは判断しながら戦ってくれていた。最後はこちらに流れが来て、コーナーに追い詰めたところで、ダウンが奪えなかったということかなと思います。

国内の環境、レベルを上げないといけない

森山監督(中央)は、スピードが上がったときの精度や的確な判断などを今後の課題に挙げた 【佐藤博之】

――イングランドの印象について。

 まあまず、(ジェイドン・)サンチョ選手の離脱というのは、影響はあったかもしれないですけれど、やってみたかったというところだけですね。印象に残ったチームはいろいろ(笑)。1つや2つじゃないので難しいです。(編注:今大会3ゴールを挙げていたサンチョは、所属するドルトムントの要望により代表から離脱した)

――選手交代を1人しかしなかった理由は?

 疲れはあったと思うのですけれど、いいプレーをしていて可能性を感じていたので、替えることによって流れが悪くなる部分を懸念しました。コーチと相談しながらこのままでもいいんじゃないかというところで、戦っている選手を最後までピッチに残すという判断をしました。

――課題をいくつか挙げていたが、今大会で得た課題を今後の育成にどう落とし込んでいけばいいと思うか?

 ここで一言で言うあれでもないとは思うんですけれど、グループリーグはしっかりと主導権を握って勝ちにいくというトライをして、フランス戦、ニューカレドニア戦は新しい選手を起用して、なかなかうまくいかない部分はありましたけれどトライをしました。このゲーム(イングランド戦)に関しては、相手をリスペクトした中でしっかり対策をして勝負にでる。個々の力の差は大きくとも、組織的に戦えば十分に勝機はあるという戦いを挑んだのですが、残念な結果に終わりました。

 課題については一言では言えない。トータル的に本当に動きながらのテクニックの部分とか、スピードが上がったときの精度、ずっと言われている的確な判断だとか、そういう部分をもっともっと磨かないといけない。当然最後の質もそうです。本当にフィジカルの強いDFだとか、スピードのあるDF、足が伸びてくる、体をぶつけてくるDFと対峙(たいじ)した中でのフィニッシュの精度を磨いていかないといけない。

 そのためには国内の、ゴール前のインテンシティー(プレー強度)が上がった中で、今日の日本の選手たちが見せてくれたような、ああいう守備の中でもしっかり決め切るという部分(が大事)。イングランドのような屈強な選手たちが守るディフェンスラインを切り崩していくタイミング、プレーの質。一瞬しかないシュートチャンスを決め切る、そのタイミングで打ち切る。そういう判断、プレーのスピードなども含めて、国内の環境をもっともっと厳しいバトルの中での精度というか、そういうものを上げていかないといけないんじゃないかなと思います。
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