【GLORY】日本格闘界がオランダに与える影響 新K-1に合わせて軽量級にスポットも

遠藤文康

日本のSB65キロトーナメント王者ゾウガリー。グルンダーとの一戦は奮戦し、見事に判定で勝利した 【(C)Glory/Eric Jackman】

 現地時間9月30日、立ち技格闘技イベント「GLORY 45」がオランダ・アムステルダムで開催された。

「GLORY」のオランダ大会が定着してきた。会場はアムステルダムにおける格闘技イベントのメッカであるスポーツホールサウド。日本で言えば後楽園ホールにあたる。

 バダ・ハリ(オランダ)の暴行事件による影響からここ数年、格闘技イベントでは大規模会場の使用不許可とされてきたオランダだった。しかし「GLORY」の粘り強い交渉により、アムステルダム市長の“偏見”も解け始め、一昨年より会場使用の許可が下りるようにまでなった。スポーツホールサウドの使用許可も同様に再び下りるようになり、久しぶりに訪れてみるとやはり地理的にもキャパ的にも、格闘技イベントにはベストな場所だろうと再確認した次第だ。

オランダキック界の変化

 1993年のK-1登場に、オランダキック界は相当な影響を受けてきた。それまでのようなタバコの煙の充満するアングラ的興行ではなく、リング上も舞台進行もすべてが観客を楽しませ盛り上げる洗練されたものになっていった。

 特に日本のK-1へ参戦した外国人選手は圧倒的にオランダ人が多かった。名目上の国籍の違いはさまざまだったが、欧州組のほとんどがオランダ在住の選手たち。もしくはオランダのジムで修練を積んだ選手だった。90年代から2000年代に活躍したそれら選手たちが今年4月のピーター・アーツ正式引退により、とうとう前線からすっかり消え去り、日本にとってはほとんど見知らぬ選手たちが今のオランダキックの屋台骨を支える形となってきている。

 旧K-1がヘビー級とMAXに特化されていたことでオランダもヘビー級と70キロ選手の層が膨張した。しかし旧K-1が崩壊し、新K-1が新たに軽量級からスタートを切ったことでオランダでも面白いことに、ヘビー級選手への注目度が急激に下がっていくとともに、軽量級選手への注目が急浮上してきた。

 これが何を意味するのかは一目瞭然で、オランダは日本のK-1の影響をダイレクトに受け、無意識的に対応しようとしているのだ。

日本のヘビー級再開で再び全階級に注目が

 日本のK-1とは別に、「K-1グローバル」という団体もあるが、オランダはそこにはほぼ興味が無い。あくまでも日本のK-1の情勢の影響を敏感に受けている。

 もともとが自然に体格が大きくなるオランダ人なので、ライト級クラスの選手はもう存在しないのだろうと思っていた。しかし、最近ではどこのジムにも60キロから65キロの選手がちらほらそろうようになっている。不思議なもので光が当たるようになると、選手はちゃんと存在していたのだ。光が当たっていなかっただけのことなのだ。

 オランダではヘビー級への注目が遠のきつつある情勢だったが、新K-1が11月に満を持して再びヘビー級トーナメントを開始することになったので、再びオランダでもヘビー級選手に光が当たるようになることだろう。

 オランダのキック関係者が見つめる先にはいつも日本がある。

 日本のK-1、Krush、REBELS、RISE、そしてシュートボクシング。最近はここに中国のクンルンファイトとWFLも加わってきている。他国遠征はあちこちあるが、やはり日本遠征で戻ってきた選手たちの高揚感に触れ、その内容を聞き及んだ仲間たちが一様に深い影響を受け日本で試合がしたいと夢を描くのは当然のことである。日本という国は他国とまったく違う別格の国なのだ。

 オランダ国内では「GLORY」が年に一度か二度、メルビン・マヌーフが主催するWFLが年二度。他に小規模興行が毎週土日にオランダの地方のどこかで開催されている。キックコースを持つジムは全土に約500。プロアマに限らずキックに関わる会員が2万人超。オランダがタイの次にキック王国と言われる所以だ。日本のK-1が軽量級からヘビー級まで階級を整えることでオランダもまた同様に各階級すべてに光が当たりそうだ。

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