「世界一エレガント」な皆川に図太さを 2020へ前途明るいニッポン新体操

椎名桂子

ミス響いた皆川の個人総合

日本凱旋試合は6位に終わり、皆川は「悔しさが多い」と振り返った 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 8月30日〜9月3日にペサロ(イタリア)で行われた第35回新体操世界選手権で、日本にとって42年ぶりの種目別フープ銅メダル獲得、個人総合でも5位入賞という快挙を成し遂げた皆川夏穂(イオン)。9月28日から東京体育館で開催された「イオンカップ2017」は、いわば凱旋試合の様相だった。

 しかし、結果は個人総合6位。16歳の喜田純鈴(エンジェルRGカガワ日中丸亀)は、4種目をノーミスでまとめ5位に入り、皆川は特別強化選手の後輩である喜田の後塵を拝することになった。

「世界選手権では自分の納得のいく演技ができたが、今回は反省が多い」と試合後の会見でも悔しさをにじませた。

 皆川にとっては1種目めのボール、これが分かれ目だった。ボールは世界選手権でも種目別決勝に残った、皆川の得意種目。序盤は観客席からため息がもれるほど美しい、艶やかな演技を見せていたが、最初の脚キャッチでミス。ボールを大きくはじいて場外となり、演技も中断してしまった。得点は13.600。ライバル達が16点以上を出しているなかで、大きな出遅れだった。

 フープでは16.800、リボン17.150と巻き返したものの、最終種目のクラブでも演技終盤で落下があり15.600と、4種目合計63.150にとどまる。世界選手権で4位と皆川のひとつ上の順位だったカチャリーナ・ガルキナ(ベラルーシ)は今大会、4種目ノーミスで66.950をマークし3位に入っており、皆川はボールとクラブでのミスの分、得点差をつけられてしまった。

「日本でいい演技を見せたいという気持ちが強すぎた」

責任感の強さからか、皆川は自国開催となると力を発揮できない試合が続いている 【奥井隆史】

 ボールでのミスについて皆川は、「イオンカップは1年に1回の日本での試合なので、いい演技を見せたいという気持ちが強すぎて空回りした」と振り返った。

 思えば皆川は、ロシアでの長期合宿が始まってからこの5年間、日本での試合のたびに同じ反省を述べている。それだけ生真面目で責任感の強い選手なのだろう。だからこそ、コツコツと努力を続け、オリンピアンになり、世界選手権銅メダリストにもなり得たのだ。

 会見で「東京五輪でのメダル獲得が目標。それがあるからうまくいかないことがあっても次に向かうことができる」と語った皆川が挙げた課題は「より強いメンタル」だった。

 東京五輪は、自国開催という特異な空気になるに違いない。その空気の中で力を発揮するためには、今より相当強靭(きょうじん)なメンタル、図太さが必要となる。

 山崎浩子強化本部長がしきりにアピールしていたように、皆川の演技の美しさ、滑らかさは世界でもトップレベルにある。「エレガントさでは世界一」という山崎本部長の言葉は、決して大袈裟でも身びいきでもないとイオンカップであらためて証明された。皆川には、世界で戦える力がある。それは確かだ。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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