「世界一エレガント」な皆川に図太さを 2020へ前途明るいニッポン新体操
「強さ」と「美しさ」両方を求めて
山崎本部長が「世界一エレガント」と評価する美しさが、皆川の最大の武器だ 【奥井隆史】
皆川は、東京五輪でのメダル獲得に向けて、メンタル面の他に「より難度の高い演技」が必要と覚悟を口にした。その一方で、自身の目指す新体操は、「曲と手具と体で美しさを表現し、見ている人が引き込まれ、感動できるもの」だと言った。
もちろん、全てを手に入れられれば最強だろうし、メダル獲得も限りなく現実に近づく。しかし、皆川夏穂という選手の個性を考えるならば、彼女の目指す理想像をより追求してほしい。
今年から適用されている2017年ルールによって、手具操作の多彩さ、手数の多さが得点につながるようになった。世界選手権金メダリストにして、今大会でも優勝したディナ・アベリナ(ロシア)は器用性に長けた、このルールの申し子とも言うべき選手だ。今大会での演技も、クラブでこそミスはあったがその他は水をも漏らさぬスーパーテクニック満載で、舌を巻くばかりだった。
しかし、その凄まじいまでのテクニックゆえに、新体操の重要な要素である表現力や芸術性にはやや欠けるきらいはある。「エレガントさ」ならば皆川に軍配が上がる。
日本の新体操はついにスタートラインに立った
皆川(右から3番目)擁するイオンはクラブ対抗戦で3位と初の表彰台。日本の新体操は着実に階段を上っている 【奥井隆史】
幸い今年からロシア合宿に加わった喜田が、世界選手権、イオンカップと飛躍を見せている。この頼もしい後輩は、皆川にとって大いなる刺激となり、脅威に違いない。同時に、日本の新体操をたった一人でけん引するのではなく、心強い仲間ができたととらえることもできるだろう。
ときに責任感に押しつぶされそうにも見えていた生真面目な皆川にとって、喜田の存在は必ずプラスになる。
1994年に始まり、今年で24回目となったイオンカップは、日本にいながら世界のトップレベルの演技を見ることができるありがたい大会であり、日本の新体操の進化に大いなる貢献をしてきた。かつては、この大会を見てしまうと、世界との差に愕然とすることもあった。が、今年は違っていた。世界選手権でのメダル獲得が後に続く選手達に与えた刺激、勇気は計り知れない。
日本の新体操は、ついにスタートラインに立った。あとは前に進むだけだ。3年後の東京五輪が、いやその後も、楽しみだ。たとえ皆川が6位に終わっても、今回のイオンカップは掛け値なしにそう感じることができた大会だった。