バルセロナが築いた早すぎる独走態勢 厄介な障害はピッチ外の混乱だけ?

第8節のアトレティコ戦が最大の山場か

今のバルセロナにとっては、ピッチ外の混乱の方が対戦相手より厄介な障害か…… 【写真:ロイター/アフロ】

 先発メンバーの顔ぶれが変わっていない中盤は、一時的にであればボール支配力を維持することができる。だがアタッキングサードにおけるスピードアップと崩しのプレーは、全てメッシ1人の背中に委ねられている。そのメッシも自身の負担を軽減すべく、両サイドバックの攻め上がりを生かす形を以前ほど頻繁に作れなくなりつつある。

 第6節のジローナ戦ではバルセロナの現状が露呈した。メッシにマンツーマンのマークをつけられ、彼の創造性を封じ込まれたバルセロナは、格下との一戦であるにもかかわらず、相手のミスと即興でできたプレーを生かすことでしか、3ゴールを挙げることができなかった。

 現時点では、勝ち点4差につけるアトレティコと新スタジアムのワンダ・メトロポリターノで対戦する第8節が最大の山場となるだろう。その先に控える12月のレアル・マドリーとのエル・クラシコ(伝統の一戦)は、年内最後の大一番となる。

 またラス・パルマスをカンプノウに迎える次節は、政治色に満たされた異例の一戦となる。カタルーニャではこの日、スペインから独立する意思を問う住民投票が行われる。この投票で独立派が過半数を占めた場合、カタルーニャ政府が本当に独立を強行できるかどうかは分からない。いずれにせよバルセロナは、投票の実施を支持する姿勢を明らかにしている。

 今のバルセロナにとっては、こうしたピッチ外の混乱の方が対戦相手より厄介な障害なのかもしれない。チームの歩みが順調すぎるがゆえ、カタルーニャのスポーツメディアは早くも来年1月に向け、リバプールに所属するフィリペ・コウチーニョの獲得に関する動きに目を向けているくらいだ。

 困難な移行期になると覚悟していたファンたちは、わずか6試合でレアル・マドリーにここまで差をつけてしまったラ・リーガの現状に肩透かしを食らった気分なのかもしれない。そんな彼らに刺激を与えられるのは、政治絡みや新戦力に関する情報といった、ピッチ外の話題くらいしかないのである。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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