デュッセルドルフで感じた宇佐美の覚悟 ライター島崎の欧州サッカー見聞録(2)
ヨーロッパは過密日程の最中です
連載第2回のテーマは、デュッセルドルフで見た宇佐美と内田の日本人対決です 【写真:アフロ】
時が過ぎるのが早く感じます。最近のドイツはたいてい好天なのですが、こちらは日本よりも雲が低い位置で垂れ込めていて、その流れがとっても速い。でも現地の方にお聞きすると今は異常気象のようで「秋はだいたい雲の流れが遅くて、穏やかな晴れの日が続くんだけれど、今年は雲の流れがいつもと違う」とのことです。
そんな中、ヨーロッパのサッカーシーンは今、日本と同じく過密日程の最中です。10月初旬に設けられている国際Aマッチウイークの影響で、国内リーグの日程が詰まっているんです。ヨーロッパは今がワールドカップ・ロシア大会予選の佳境。10月の2試合で、52の国と地域が9グループに分かれた予選の1位9カ国が決まり、1位は自動的に本大会への出場権を得ます。
そしてグループ2位の成績上位8カ国が4組に分かれて、11月にホーム&アウェーのプレーオフを行い、その勝者4カ国も本大会へ進めるわけです。ちなみにグループCに属するドイツは現在、勝ち点24の1位ですが、2位・北アイルランドとは勝ち点5差で、北アイルランドとは10月5日にアウェーで直接対決が控えています。
多くの日本人が住む街、デュッセルドルフへ
フォルトゥナのホームスタジアム「エスプリ・アレーナ」の外観です 【島崎英純】
日曜日のうららかな朝。僕は今住んでいる街からドイツ鉄道の「ドイチェ・バーン(略称DB)」に乗ってドイツ西部ノルトライン=ベストファーレン州の州都・デュッセルドルフへ向かっていました。
駅から電車に乗り込んで席に座って一息つくと、前方に何やら賑やかな一団が……。ほぼ全員がビール瓶、もしくはウイスキーボトルをラッパ飲みして大騒ぎ。「今、何時でしたっけ?」。思わず時計を見返してしまったのですが、彼らのいでたちをみて膝を打ちました。大男たちの左胸には「1.FC UNION」のワッペンが貼られています。そう、彼らは遠路はるばるベルリンからデュッセルドルフへ向かうウニオン・ベルリンのサポーターたちだったのです。
デュッセルドルフ中央駅に降り立つと、はい、すでに駅前では「ビール祭り」が始まっていました。ドイツ・ブンデスリーガ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフvs.ウニオン・ベルリンは13時30分試合開始なのですが、すでに午前中からこの人だかり、そして酒盛り! さすがビール大国・ドイツの面目躍如です。ワクワクしてきます。僕もあやからねば。
フォルトゥナのホームスタジアムである「ESPRIT arena(エスプリ・アレーナ)」までは中央駅から地下鉄のUバーンで約12分かかりますが、最寄りの「ESPRIT arena/Messe Nord」駅はスタジアムの目の前なので利便性は抜群です。ただ、スタジアムに着くと、何だかいつもと様相が異なります。周りを見渡すと、日本人の方々がたくさんいらっしゃる!
デュッセルドルフは日本企業の進出が目覚ましい街で、市内にはドイツ国内では珍しく日本人街もあり、約7000人の日本人駐在員や家族の方々が暮らしていると言われています。でも普段のフォルトゥナのゲームでは、これほど日本人の方々が観戦に訪れることはなかったはず。それではなぜ今回、これほどの日本人が「エスプリ・アレーナ」へ訪れたのか。
宇佐美フィーバーに沸く日本人
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「ドキドキしてきた?」
「うん。試合が始まったらどうなるかな? 宇佐美選手がゴールなんてしちゃったら、どうしよう?」
日本人選手に興味を抱いて、初めてのサッカー観戦に訪れる方々の思いに触れるだけで満ち足りた気持ちになります。プロサッカー選手って、そのスポーツと母国の親善大使的な役目も担っているんだなぁと感慨深くなりました。
また、現地のドイツ人の方々も優しい人ばかりで、入り口が分からずに右往左往している日本人ファンの手を引っ張って「こっちから入るんだよ〜」なんて言っていて、いろいろなところで交流が生まれています。海外での日本人対決のゲームは何回か観戦しているのですが、17年9月10日のエスプリ・アレーナの雰囲気は他のどこにもない、独特な温かみに包まれているように感じました。
好対照だった宇佐美と内田の佇まい
内田と宇佐美が歩んできた苦難の道程を考えると、その心情に思いを馳せることができます 【島崎英純】
かたや内田は、他の選手とは少しだけ距離を置き、中腰になって入念なストレッチをした後、すくっと立ち上がってボールをポーンと蹴り上げて上空を見つめている姿が印象的でした。約2年に渡る膝のけがからの復活を期し、10年から在籍したシャルケを離れて新天地・ベルリンでのプレーを選択した彼にとって、新チームでのデビュー戦はただの1試合ではない。宇佐美と内田の試合前の佇まいは好対照でしたが、それぞれが歩んできた苦難の道程を考えると、その心情に思いを馳せることができます。