【ボクシング】亀海喜寛が4階級制覇王者コットと対戦 体格の利生かしコット有利を覆せるか!?

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日本時間27日に行われるWBO世界スーパーウェルター級王座決定戦で激突するミゲール・コット(左)と亀海喜寛 【Getty Images】

 プロボクシングの元日本スーパーライト級王者で、東洋太平洋ウェルター級王座を獲得したこともある亀海喜寛(34=帝拳)が26日(日本時間27日)、米国カリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターでWBO世界スーパーウェルター級王座決定戦に臨む。相手は4階級制覇の実績を持つ世界的なビッグネーム、ミゲール・コット(36=プエルトリコ)だ。オッズは9対2でコット有利と出ているが、亀海は「コットは大好きな選手のひとりだが、試合が決まったからには勝つことしか考えていない」と意気込みを口にしている。

世界戦だけで24戦を経験しているコット

 1952年に白井義男氏が世界フライ級王者になってから65年、日本は80人以上の世界王者を輩出したが、これほどのビッグネームと日本人ボクサーが世界戦を行うのは稀有(けう)なことと言える。

 のちに4階級制覇を成し遂げる「石の拳」ロベルト・デュラン(パナマ)にガッツ石松(ヨネクラ)や高山将孝(ピストン堀口)が挑んだり、のちに3階級制覇を達成するアレクシス・アルゲリョ(ニカラグア)にロイヤル小林(国際)が挑戦したことはあったが、それはデュランやアルゲリョが世界的なスター選手になる前のことだった。ひょっとしたら、今回のように実績も知名度も十分にある世界的なスター選手と日本人選手が対戦するのは、8連続KO防衛中だった「黄金のバンタム」エデル・ジョフレ(ブラジル)にファイティング原田(笹崎)が挑んだとき(1965年)までさかのぼらなければならないのかもしれない。いや、軽量級(バンタム級)のジョフレ対原田が日本で開催されたことを考えれば、ボクシングの本場・米国で行われる中重量級のコット対亀海は、それ以上に国際的な注目ファイトと位置づけることができるかもしれない。

 ただし、今回のカードを客観的に見た場合、現時点での主役がコットであることは間違いないところだ。

 コットは2000年シドニー五輪に出場後、01年2月にプロデビュー。元世界王者や世界挑戦経験者らを下しながら力をつけ、04年にはWBO世界スーパーライト級王座を獲得した。6度防衛後、王座を返上してウェルター級に転向し、06年にWBA王座を手に入れて2階級制覇を成し遂げた。4度防衛後、体格で勝るアントニオ・マルガリート(メキシコ)に11回TKO負けを喫して初の挫折を味わったが、7カ月後にはWBO王座で返り咲きを果たした。

 その後、マニー・パッキャオ(フィリピン)やフロイド・メイウェザーJr.(米国)といったスーパースターとも拳を交えたが、いずれも激闘のすえ敗れている。この間、スーパーウェルター級でWBA王座を獲得し、かつて苦杯を喫したマルガリートにも雪辱を果たしている。

 14年、WBC世界ミドル級王者のセルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)を10回終了TKOで下して4階級制覇を達成。初防衛戦では元王者ダニエル・ギール(オーストラリア)を4回TKOで一蹴した。2度目の防衛戦でサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)に敗れ、今回がそれ以来1年9カ月ぶりのリングとなる。

 戦績は45戦40勝(33KO)5敗。このうち24試合が世界戦(20勝16KO4敗)だ。

 スーパーライト級で初めて世界王座を獲得してから13年がたとうとしているわけだが、当然、そのころとは体格も戦い方も変化している。亀海は「以前はディフェンスに優れ、パンチもスピードもあって決定力があったが、階級を上げてからはワンパンチの威力を維持しながら慎重に戦うようになった」と分析している。そのうえで「攻防兼備で穴が少ない選手」と話している。

頑丈な体とハートが身上の亀海

 これに対し、亀海は全日本選手権を制するなどアマチュアを経て05年にプロデビュー。10年に日本スーパーライト級王座を獲得し、初防衛戦後には元世界ライト級王者のホセ・アルファロ(ニカラグア)にも6回KO勝ちを収めた。

 翌11年には米国進出を果たし、これまで本場で8戦を行っている。結果こそ3勝(3KO)3敗2分だが、元世界王者や世界ランカーら強豪との手合わせが多く、いずれも激闘だった。特に昨年4月と9月のヘスス・ソト・カラス(メキシコ)戦は打撃戦で、分のいい引き分けに終わった初戦は年間最高試合にノミネートされたほどだった。再戦では亀海が力の差を示して8回TKO勝ちを収めている。こうした実績と内容が評価され、今回のコット戦が実現したと言える。

 戦績は32戦27勝(24KO)3敗2分。KO率は75%で、コット(73%)をわずかに上回っている。

 もともと亀海はディフェンスに長けた攻防兼備型だったが、階級を上げるにつれて攻撃型に変ぼうしつつある。そのベースにあるのは頑丈な体と強じんなハートだ。亀海自身「気持ちの強さには自信がある」と話している。

 客観的に試合を展望するならばコット有利は動かせないところといえる。コットはフレディ・ローチ・トレーナーに師事してからは足を使いながら左ジャブを突いて出入りするボクシングを会得しており、リスクを小さく抑えるために今回もその戦い方を用いる可能性が高い。

 身長で5センチ、リーチで10センチ勝る亀海とすれば体格の利を生かして馬力で押し込みたいところだが、コットのパンチ力を考えれば、その作業がいかに難しいかということも十分に分かっているはずだ。

 それでも亀海は積極的に攻めていく必要があるだろう。
「いかに最初から自分のペースに持っていくかということが大事。そのうえで中盤から終盤にかけて仕掛けていかないといけないと思う」と亀海は話す。

 日本のボクシング史に新たな1ページが刻まれるのかどうか。コット対亀海に要注目だ。

Written by ボクシングライター原功
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WBO世界S・ウェルター級王座決定戦
ミゲール・コット(プエルトリコ)
亀海喜寛(日本/帝拳)
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