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投手の良し悪しをどう評価する?
初めてのセイバーメトリクス講座(2)
7月5日に通算200セーブを達成したソフトバンクのサファテ(右)はセイバーの指標でも上位にランクされる
7月5日に通算200セーブを達成したソフトバンクのサファテ(右)はセイバーの指標でも上位にランクされる【写真は共同】

『初めてのセイバーメトリクス講座』の第2回目。前回はセイバーメトリクスの成り立ちとOPSについてお送りしましたが、きょうは「投手」についてのお話。引き続きセイバー研究で知られる統計学者の鳥越規央先生と一緒に、ざっくり気味にお届けしたいと思います!(今シーズンのデータは7月26日時点のもの)

先発投手にとって重要な数字は?

鳥越:今日は投手の話をしていきましょう。まず、いいピッチャーの指標となるものは何があるでしょうか?


カネシゲ:(ボケた方がいいのかな?)……グッズが売れる、とか?


鳥越:なるほど。でも実際に聞いたらその辺は評価されていないらしいですね。グッズが売れるから給料上がるかというとそうでもないらしくて、やっぱり成績を残すことのほうが大事らしいですよ。


カネシゲ:(マジレスされても……)


鳥越:たとえば先発ピッチャーが目標にする指標として一番言われるのは?


カネシゲ:それは勝利数!


鳥越:ですよね。だけど仮に自分が1失点で完投したけれど、味方が0点ならどうなりますか?


カネシゲ:いわゆる“無援護”ってヤツですね。当然、敗戦投手になります。


鳥越:その通り。9回1失点という素晴らしいピッチングなのに、「勝ち」どころか「負け」がつく。でも、そんなピッチャーもちゃんと評価してあげないとかわいそうですよね。


カネシゲ:かわいそう! なんとかしてよ、トリゴえもん!


鳥越:(無視して)……ということで、セイバーメトリクスでは味方が何点取るか取らないかは関係なく、先発投手がしっかり先発としての役割を果たしたら「QS(クオリティスタート)」という記録をつけることにしました。先発投手が6回以上投げて自責点3以内に抑えれば記録されます。


カネシゲ:QSはそこそこ知られた指標ですよね。この概念もセイバーの人が提唱したんですか?


鳥越:そうです。ちなみに、なぜ6回自責点3以内だと思います?


カネシゲ:うーん、わかりません。


鳥越:覚えやすいからです。


カネシゲ:え!? それだけ?


鳥越:実はそれだけです。ただメジャーリーグの中4日の登板間隔で、先発投手としてはここが合格ラインということですね。QS率が高いピッチャーは先発として有能ということになります。

7月26日時点。規定投球回数到達投手を対象
7月26日時点。規定投球回数到達投手を対象【資料提供:鳥越規央】

鳥越:QS率が60%程度あればいい先発投手と言えるでしょう。巨人は田口麗斗、マイコラス、菅野智之の3本柱がしっかりやっています。


カネシゲ:巨人は13連敗もあったけど、投打がかみ合えばやはり強いチームってことですね。そしてパ・リーグは菊池雄星(埼玉西武)と岸孝之(東北楽天)が90%超え!


鳥越:パは楽天の3本柱がしっかりしています。あと意外とオリックスから3人もランクインしているんです。このすぐ下にも2人います。


カネシゲ:先発5人がしっかりやっている。でも順位にはつながらない……。


鳥越:かみ合わないですね。オリックスのかみ合わなさは山のごとしです。ちなみに田中将大は楽天時代の2012年からヤンキースに移籍した14年までで、50試合連続QSという世界記録を持っています。


カネシゲ:ごっ……50試合連続!? 簡単には破られない記録でしょうね。


鳥越:まあQSはあくまでもセイバー上の指標ですし、日米をまたいでの記録なので非公認記録ですけどね。田中投手はシーズン24勝を評価されたというよりも、驚異的なQS率を評価されて、ヤンキースと大型契約になったと言えます。


カネシゲ:なるほど。メジャーはセイバー先進国ですもんね。勝敗よりもQS!

1イニングにどれくらいランナーを出すか

鳥越:と、ここまでが先発投手の評価の話。で、今度紹介するのは、先発だけでなく中継ぎや抑えにも使える指標「WHIP(ウィップ)」です。


カネシゲ:これはちょいちょい見かけますが「ウィップ」と読むんですね。


鳥越:WHIPとは「Walks plus Hits per Inning Pitched」の頭文字で、式はこうなります。


WHIP=(与四球+被安打)/投球回数


 簡単に言えば1イニング当たり何人ランナーを出すかという指標です。1.0未満なら球界を代表するエース、1.2未満ならエース級、1.4を上回ると問題ありと考えてください。


カネシゲ:これは1イニング当たりのランナー数だから、1.0とか1.4とか、パッと見は大差なく見えるけど回を重ねると差は大きくなりますね。


鳥越:そういうことです。投手の平均WHIPを1.2ぐらいとして「1.2×9イニング」だと約11人。けっこう塁に出してるでしょ?


カネシゲ:本当ですね。

7月26日時点。規定投球回数の1/3以上を投げた投手を対象
7月26日時点。規定投球回数の1/3以上を投げた投手を対象【資料提供:鳥越規央】

鳥越:WHIPは先発投手もリリーフ投手も同等に見ることができる指標ですが、リリーフ投手の方が良い数字が出る傾向にあります。


カネシゲ:リリーフは短いイニングで力を出し切りますもんね。


鳥越:そんな中、先発投手なのに0.9という数字を出す菅野智之は素晴らしいです。ちょっとあり得ない。


カネシゲ:1.0未満。まさに球界を代表するエースですね。


鳥越:パ・リーグでも岸、菊池、美馬は先発投手なのに1.0を切る大活躍をしています。そしてサファテが別格の数字。


カネシゲ:0.69! 9回投げて6.21人しかランナーを出さないってことか〜。それはスゴイ。

カネシゲタカシ
カネシゲタカシ
1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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