徳島の好調を支えるスペイン人監督の手腕 そのサッカー観とマネジメント力に迫る
異色の経歴を持つロドリゲス監督
今季就任したロドリゲス監督の下、徳島は前半戦で好調を見せている 【(C)TOKUSHIMA VORTIS】
スペインのオビエド大学で「Phisycal Activity and Sport Sciences(直訳すると「身体活動とスポーツ科学」)」の博士号を取得。監督としては異色の経歴だろう。ロドリゲス監督も若かりしころは、プロ選手になる夢を抱いていた。だが、17歳の時に左膝前十字靭帯(じんたい)を損傷。選手としての夢を諦めざるを得なくなり、指導者という新しい夢を志すようになる。だが、「私は何も知らないことに気付いた」(ロドリゲス監督)。指導者としてのイロハを持たない中、自分の進むべき道を模索。そこで決断したのが大学進学だった。
一見すると遠回りの選択にも見える。だが、「スポーツ科学を専攻し、戦術や技術だけでなく、サッカーをさまざまな角度から考えられるようになった。フィジカル的な要素、方法論、心理的な部分、栄養学も学んだ」と、ロドリゲス監督の人生においては大学進学が最善の選択であったことをその後、証明していくことになる。
転機となったのが、「24歳の時にレアル・オビエド(当時スペイン1部)のスタッフに入れたこと」。コーチとして在籍した1998年〜2003年、大学で得た知識と経験が自身の礎となっていることを再認識する。それとともに、クラブチームに所属できたことで監督業がより身近な存在にもなった。
そこからは本格的に監督業を志し、レアル・マドリー メキシコでアカデミーダイレクターを務め、クラブチームのヘッドコーチやアシスタントコーチを経て、13年にU−17サウジアラビア代表監督に就任。その後もジローナFC監督(当時スペイン2部)、タイリーグの3クラブで監督として実績と経験を積み上げてきた。
指揮する姿は情熱的な表情がピックアップされがちだ。しかしチームの好調の根幹を支えているのは、ロドリゲス監督の科学的知識や論理的思考と、スペイン流のサッカー戦術が融合したインテリジェンスの部分である。
現場とフロントの好バランス
好調の要因の一つに、現場とフロントがコンセプトを共有したチーム編成がある 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
J1昇格やJ1定着を目指すことは当然ながら、中規模の地域クラブが生き抜いていく術(すべ)として、スター選手を獲得しながら上位進出を目指すのではなく、徳島が求める「選手モデル」を具体的に画定。それを満たす若手選手を中心に獲得して、才能を伸ばしながら組織力を高めていこうと強化部は動いている。もちろん、その実現には監督にもクラブコンセプトを共有してもらうことが必須だが、いまはそのバランスがうまく働いているように見える。
特に今季は、岡田明彦強化部長とロドリゲス監督が同学年ということも、コミュニケーションをとる上でいい方向に影響したようだ。チーム編成に関しても強化部の意向だけではなく、建設的な意見交換があった上で進められたと聞く。シーズンインしてからチームを育てるのではなく、中期的なクラブの道筋を整備しながら、目前のシーズンにも早くから準備を進められた結果が功を奏している。