徳島の好調を支えるスペイン人監督の手腕 そのサッカー観とマネジメント力に迫る
用意周到だったプレシーズンの使い方
インテンシティーの高い守備を徹底し、常に主導権を手中におさめようとするのが今季の徳島 【(C)TOKUSHIMA VORTIS】
キャンプインも例年より1週間以上繰り上げ、早い時期から戦術理解度を高めながら質の高い練習を維持。そして、チームスタイルのベースであり、ロドリゲス監督が最も重要視している「インテンシティー(強度)の高さ」を求め続けてきた。
開幕後は中盤を軸とした多彩なショートパスを生かした攻撃が目立つ。だが、その攻撃を支えているのは、球際の厳しさや切り替えの早さで相手を圧倒し、試合の主導権を握るためのインテンシティーの高い守備だ。
今季の徳島のスタイルを端的に言えば、GKがビルドアップに絡み、DFがボールを運び、コンパクトさを保ちながら相手陣地へ進入。数的優位を意図的に生み出す策を施し、相手を混乱に陥らせていく。また、攻撃が不発に終わったとしても、前述した通り相手を上回るインテンシティーの高い守備を徹底し、素早くボールを奪い返すことで常に主導権を手中に収めていこうとする。
そのロジックを成立させるために、どのエリアでプレーする時間を増やすべきか、誰がどの立ち位置を取るべきかを共有し、相手の状況に応じてフレキシブルに変化を加えていくなどして、用意周到にプレシーズンが進められた。
キャプテン岩尾「監督はモチベータ―」
ロドリゲス監督は試合のみならずオフザピッチでも選手とのコミュニケーションを怠らない 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
開幕ダッシュに成功したのち、キャプテンの岩尾憲は指揮官のことを「モチベータ―」と説明した。そこには、心理面で誰ひとりとして気持ちを切らすことなく開幕を迎えさせたマネジメント力も垣間見える。
これだけの準備があれば、開幕直後の好調はそれなりに予期できた。プレシーズンにはJ1のアルビレックス新潟を撃破して自信も備えてきた。それだけに、リーグ戦で五分五分の展開に持ち込まれたとしても、渋く勝ち点を積み上げることができた。そして、紆余(うよ)曲折ありながらも、前半戦終了時点では単独3位に浮上。J1自動昇格にも手が届くところまで追撃し、7月23日には2位アビスパ福岡との上位直接対決(1−0)で勝ち点3を強引に手繰り寄せる底力もみせた。
と、ここまでは完璧な筋書き。だが、いまは窮地に立たされている。リーグ4位と好調を維持しているだけにオーバーな表現ではあったが、7月25日に行われた第25節・湘南ベルマーレ戦(0−2)、続くジェフ千葉戦(0−1)も敗戦。ここにきて今季初の連敗を喫した。
たかが一度の連敗くらいと思われるかもしれない。しかしながら、このチームには成功体験ならぬ、失敗体験がない。若さゆえ、どちらに傾くか分からない。スポーツを突き詰めていくと、結局のところメンタルに行きつく。薄氷を踏む思いで歩んできた「好調」だったのか、それとも頑丈な土台を築きながら歩んできた「好調」だったのか。
本当に注目すべきは、ここからの徳島である。