『論語』の教えを胸に、流経大柏が総体V 堅守速攻で日本一に輝いた強さの背景
寮生ではない菊地にも心に響いた言葉が
菊地(10)、熊澤和希(14)には、それぞれに心に響いた『論語』の言葉がある 【平野貴也】
「子曰、不曰如之何、如之何者、吾末如之何也已矣――子曰わく、之(これ)を如何(いかん)せん、之を如何せんと曰(い)はざる者は、吾之(われ、これ)を如何ともすること末(な)きのみ」
大会前の5月、菊地が「これをどうしようかと思って行動を考えない者には、何をすることもできない、みたいな意味の言葉で、『ああ、本当にそうだよな』と思いましたし、覚えやすかったので覚えました。効果があるかどうかは分からないですけど」と言って、教えてくれたものだ。チームのけん引役を務めた彼は、少なからず言葉の影響を受けているように思えた。
「子曰、巧言令色、鮮矣仁――子曰わく、巧言(こうげん)令色、鮮(すくな)し仁(じん)」
これは、準々決勝と決勝で、ともに途中出場で決勝点を決めた2年生MF熊澤和希が優勝した後に教えてくれた言葉だ。
「口ばかり達者な人物は、人徳を得ることはできない、という意味です。自分は中学生のころ、うまくプレーができないときに、すぐ他人のせいにして要求ばかりしてしまうところがあったんですけれど、この言葉を知って、まず自分を見直さないとダメだなと思いました」
「本当に明日から変わろうと自分で思える」(宮本)
優勝を喜んだ後、宮本は「ほっとした」と言い、菊地は「安心した」と語った 【平野貴也】
主将の宮本は「絶対に将来のためになるからと監督に言われて暗唱したけれど、最初は、『こんなの誰が知っているんだよ』と思っていました。でも、自分で深く考え込んで、自分で答えを出すときに、自分の中の知識として『論語』を覚えていると、考え方の幅が広がって、見る世界が少し変わってくる。本当に明日から変わろうと自分で思える」と言った。
変われと言われたから変わるのではなく、変わろうと思うから変わるのだ。
優勝を喜んだ後、宮本は「ほっとした」と言い、菊地は「安心した」と語った。どれだけの覚悟をもって、選手たちがインターハイに臨んでいたのかが伝わってきた。リーグ戦での大量失点の解消に貢献した宮本や菊地は、言葉によって自分を変えようとした選手だ。課題だった守備を改善し、堅守速攻で日本一に輝いた強さの背景に、『論語』暗唱の影響がうっすらと見てとれた。