モリエンテスが語る、サッカー人生の岐路 銀河系軍団の熾烈なポジション争い

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ロナウドの加入はサッカー人生の岐路だった

ロナウドの加入について、モリエンテスは「サッカー人生の岐路だった」と語る 【宇都宮徹壱】

――モリエンテスさんの場合、02年にポジションを争うライバルとしてワールドカップ日韓大会で得点王になったロナウドが加入しました。当時の心境は?

 レアル・マドリーにとってナンバー1の選手が加入することは普通のことでしかない。チームにとっては通常の出来事だけれど、個人的には非常に重要なサッカー人生の岐路だったと思う。

 当時は、今後のポジション争いが非常に熾(し)烈なものになると思い、頑張って競争力を上げなければいけないと思ったよ。ただ、既に26〜27歳であったし、1年ほど様子を見てからモナコへの(期限付き)移籍と、その後はリバプールに移籍することを決めた。

――レアル・マドリーでスターたちの競争がより一層激しくなったのはフロレンティーノ・ペレス会長が就任してからだと思います。最初にルイス・フィーゴがバルセロナからやってきた衝撃や、当時について覚えていることはありますか?

 フィーゴの移籍についてはいろいろあったし、評価は分かれたけれど、プロの世界ではそういった移籍は普通に行われていること。やはり良いプレーヤーは常に良いチームに動こうとするし、ファンにしてみれば新しいスターが来ることはうれしいことだ。僕らは通常の出来事として捉えていたよ。

ロナウドやオーウェンらとのポジション争いは「素晴らしい経験」と振り返るが、移籍を考えるようになった要因でもある 【写真:ロイター/アフロ】

――リバプール移籍前にはロナウドに加えて、マイケル・オーウェンも加入していました。世界最高峰の選手たちとのポジション争いは、その後に経験した他のクラブでのポジション争いと比べてどうでしたか?

 ロナウドがやってきたときは、基本的にはスーパースターがやってきたという感じはなく、地に足がついた普通の人だと思ったよ。そして、非常にサッカーを愛しているという印象を持った。

 ただ、彼らとのポジション争いについては、他のクラブとは全く異なる経験だったと思う。レアル・マドリーは世界最高峰の選手がいるチームだから。世界で一番素晴らしいチームメートと競争ができたことは素晴らしい経験だけれど、それと同時に自分もプレーで示さなければいけなかった。そういった点から移籍を考えるようになった。

 当時はリバプールにラファエル・ベニテス監督がいて、私に「非常に重要な役割を示す選手になるだろう」と声をかけてくれたのが(移籍の)決め手になった。ロナウドやオーウェンはバロンドールを取っている素晴らしい選手なので、とても熾烈な争いだったね。

――移籍する前の05年あたりになると、グティやデイビット・ベッカムがボランチを務めるなど、スター選手を起用するためにチームのバランスが少し崩れていたように感じます。プレーをしていて難しさは感じていましたか?

 そういった変更というか、調整は普通に行われることだし、監督が代わるといろいろ試したりポジションを変えたりするものだ。06−07シーズンにはリーグ優勝をしているよね。だから調整は実際にうまくいっていたと思うよ。

タイトルを獲得すれば、正しい哲学とみなされる

リバプールやモナコ(写真)でもプレーしたが、レアル・マドリーに勝る経験はないと振り返る 【Getty Images】

――スター選手を獲得し続けるクラブの方針を支持しますか。それとも、カンテラーノ(下部組織出身選手)をもう少し起用すべきだと思いますか?

 確かにカンテラから上がってきた選手が育ってプレーできれば素敵なことだと思う。ただ、現実的には難しいことだ。レアル・マドリーのトップチームでプレーするまでには時間がかかるし、誰でもなれるわけではない。レアル・マドリーの哲学というのは、「その市場の中で一番の選手を起用する」ということだし、それが重要なんだと思う。とにかく、タイトルを獲得することが重要なんだ。タイトルを獲得してさえいれば、それが正しい哲学とみなされるものなんだよ。

――レアル・マドリーが獲得する選手リストの中に日本人選手が入る可能性はありますか?

 もしかしたら未来にはその可能性があるかもしれない。一番重要なのはJリーグを進化させることだ。そこからいい選手が生まれれば、少しずつ欧州に移籍できるようになって、いずれレアル・マドリーでプレーできるレベルになるかもしれない。

 今は乾(貴士)選手がエイバルでプレーしているが、彼のような素晴らしい選手がどんどん増えれば、いずれは可能性があるかもしれないね。

今後はラ・リーガのアンバサダーとして自身の経験を伝えていく 【宇都宮徹壱】

――モリエンテスさん自身がレアル・マドリーで得た経験は、その後の人生にどんな影響を与えましたか。

 レアル・マドリーの経験は最高峰であり、それに勝る経験はないと思う。言葉で簡単に表現することはできないけれど、学ぶことがたくさんあったし、幼いころからの夢を実現できたことは素晴らしい経験だった。

 ただ、その後に海外でプレーした経験も自分には非常に重要だったと思う。新しい文化や語学を学ぶことは実りのあることだったし、サッカー自体もフランスやイギリスでは違うやり方を学んだ。自分のサッカーに対する思いや知識も大きくなったと思うし、個人的にも成長できたと思うよ。そういった経験を伝えることが、私の今の役目だ。

――その最高峰の経験をこれから日本にたくさん伝えて下さい。

 そうだね。ありがとう。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)

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