ボルトや日本人ランナーの特徴とは? 男子100メートル選手をタイプ分け
イギリスのロンドンで開催される第16回世界陸上競技選手権大会(以下、世界陸上)、男子100メートル決勝のスタート時刻である。絶対王者ウサイン・ボルト(ジャマイカ)のラストランにもなる舞台だ。
速く走るにはどうすればいい?
100メートルの世界記録保持者であるボルト(右から2人目)の最高速度時には秒速12.3メートル(時速約44キロ)を超える 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】
走る速さは、1歩の歩幅(ストライド)と回転数(ピッチ)の積によって決定される。100メートルの世界記録保持者(9秒58)であるボルトの最高速度時には秒速12.3メートル(時速約44キロ)を超える。単純計算で言えば、約3メートルのストライドで、足を1秒間に約4回転させていることになる。つまり理論上、ストライドとピッチを高めれば、速く走れるようになるのだ。
しかし、この2つは相反する関係にある。選手の体格やレース展開によってもバランスが異なるため、走り方の特徴を捉えることができる。
ストライド型の特徴は、一歩あたりの地面に加える力が大きく、滞空時間の長いダイナミックな走りだ。レース展開としては、スタートで出遅れ後半に追い上げてくる選手が多い。
一方でピッチ型の特徴は、一歩あたりの接地時間が短く、無駄のない足の軌道を描く。レース展開は、スタートからスムーズな足運びで加速していく前半型の選手が多数を占める。どちらのタイプ(ストライド型・ピッチ型)、レース展開(前半型・後半型)が有利というわけではないが、選手たちの特徴を知ることで、競技に対する理解も深まってくるだろう。本稿では世界陸上における注目選手と日本人選手について、この2軸から考察する。
ストライド型かつ前半型のガトリン
ガトリン(中央)はストライド型かつ前半型の選手。並々ならぬ思いで「打倒ボルト」に燃えている 【写真:ロイター/アフロ】
得意の前半で主導権を握った2015年の世界陸上北京大会(以下、北京大会)、16年リオデジャネイロ五輪では、あと一歩でボルトに勝利というところまで迫った。
35歳となった今シーズンは不本意なレースが続いていたが、6月下旬の全米選手権では復調の兆しが見られた。今回の世界陸上では、予選から前半で他を圧倒するガトリンらしいレースができれば、「打倒ボルト」のチャンスはあるだろう。
「ネクスト・ボルト」の特徴
「ネクスト・ボルト」の呼び声も高いデグラッセ(中央)。負傷により欠場が決まったものの、ビッグゲームでの勝負強さが魅力だ 【写真:ロイター/アフロ】
大会直前に負ったケガのため今大会は欠場することが決まったが、デグラッセの魅力はビッグゲームでの勝負強さにある。北京大会やリオ五輪では決勝で自己ベストを更新(北京大会は9秒92、リオ五輪は9秒91)し、メダルを獲得。この勝負強さこそが「ネクスト・ボルト」たるゆえんだ。
昨年までは右肘が伸びる独特の腕振りだったものの、今季はこれが改善されている。これによってレース終盤でのブレが少なくなり、磨きのかかった後半の追い込みが見られるようになった。
ピッチ型で後半型の飯塚。大柄ながら、無駄のないコンパクトな走りが持ち味だ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】