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ボルトや日本人ランナーの特徴とは?
男子100メートル選手をタイプ分け

 日本時間8月6日の早朝5時45分にその号砲は鳴る。


 イギリスのロンドンで開催される第16回世界陸上競技選手権大会(以下、世界陸上)、男子100メートル決勝のスタート時刻である。絶対王者ウサイン・ボルト(ジャマイカ)のラストランにもなる舞台だ。

速く走るにはどうすればいい?

100メートルの世界記録保持者であるボルト(右から2人目)の最高速度時には秒速12.3メートル(時速約44キロ)を超える
100メートルの世界記録保持者であるボルト(右から2人目)の最高速度時には秒速12.3メートル(時速約44キロ)を超える【写真:青木紘二/アフロスポーツ】

 人類最速を決める100メートル決勝。そのスピードはどのように生み出されているのか。


 走る速さは、1歩の歩幅(ストライド)と回転数(ピッチ)の積によって決定される。100メートルの世界記録保持者(9秒58)であるボルトの最高速度時には秒速12.3メートル(時速約44キロ)を超える。単純計算で言えば、約3メートルのストライドで、足を1秒間に約4回転させていることになる。つまり理論上、ストライドとピッチを高めれば、速く走れるようになるのだ。


 しかし、この2つは相反する関係にある。選手の体格やレース展開によってもバランスが異なるため、走り方の特徴を捉えることができる。


 ストライド型の特徴は、一歩あたりの地面に加える力が大きく、滞空時間の長いダイナミックな走りだ。レース展開としては、スタートで出遅れ後半に追い上げてくる選手が多い。


 一方でピッチ型の特徴は、一歩あたりの接地時間が短く、無駄のない足の軌道を描く。レース展開は、スタートからスムーズな足運びで加速していく前半型の選手が多数を占める。どちらのタイプ(ストライド型・ピッチ型)、レース展開(前半型・後半型)が有利というわけではないが、選手たちの特徴を知ることで、競技に対する理解も深まってくるだろう。本稿では世界陸上における注目選手と日本人選手について、この2軸から考察する。

ストライド型かつ前半型のガトリン

ガトリン(中央)はストライド型かつ前半型の選手。並々ならぬ思いで「打倒ボルト」に燃えている
ガトリン(中央)はストライド型かつ前半型の選手。並々ならぬ思いで「打倒ボルト」に燃えている【写真:ロイター/アフロ】

 並々ならぬ思いで「打倒ボルト」に燃えているジャスティン・ガトリン(米国)は、大きなストライドでスタートからの加速を得意とするストライド型かつ前半型の選手だ。ピッチ型の選手の多くは前半を得意とするが、ガトリンの場合はストライドを武器にスタートから加速していく。背中と臀部(でんぶ)の境目の見分けがつかぬほど発達した筋肉から生み出される力を推進力に変えている。


 得意の前半で主導権を握った2015年の世界陸上北京大会(以下、北京大会)、16年リオデジャネイロ五輪では、あと一歩でボルトに勝利というところまで迫った。


 35歳となった今シーズンは不本意なレースが続いていたが、6月下旬の全米選手権では復調の兆しが見られた。今回の世界陸上では、予選から前半で他を圧倒するガトリンらしいレースができれば、「打倒ボルト」のチャンスはあるだろう。

「ネクスト・ボルト」の特徴

「ネクスト・ボルト」の呼び声も高いデグラッセ(中央)。負傷により欠場が決まったものの、ビッグゲームでの勝負強さが魅力だ
「ネクスト・ボルト」の呼び声も高いデグラッセ(中央)。負傷により欠場が決まったものの、ビッグゲームでの勝負強さが魅力だ【写真:ロイター/アフロ】

 そんなガトリンに対し、「ネクスト・ボルト」の呼び声が高いアンドレ・デグラッセ(カナダ)は、ピッチ型かつ後半型の選手である。ゴール前までピッチが落ちず接戦に強く、地面からの反発をもらうことがうまい。接地時間が非常に短く、弾むように駆け抜ける。ゴール前はどんなスプリンターも減速は避けられないが、この幅が小さいため接戦になった時に順位を取れる。


 大会直前に負ったケガのため今大会は欠場することが決まったが、デグラッセの魅力はビッグゲームでの勝負強さにある。北京大会やリオ五輪では決勝で自己ベストを更新(北京大会は9秒92、リオ五輪は9秒91)し、メダルを獲得。この勝負強さこそが「ネクスト・ボルト」たるゆえんだ。


 昨年までは右肘が伸びる独特の腕振りだったものの、今季はこれが改善されている。これによってレース終盤でのブレが少なくなり、磨きのかかった後半の追い込みが見られるようになった。

ピッチ型で後半型の飯塚。大柄ながら、無駄のないコンパクトな走りが持ち味だ
ピッチ型で後半型の飯塚。大柄ながら、無駄のないコンパクトな走りが持ち味だ【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 日本人選手でこのタイプに近いのは、今大会200メートルに出場する飯塚翔太(ミズノ)。186センチと大柄ながら、無駄のないコンパクトな走りで高いピッチを生み出し、競り合いにも強い。同種目の10年世界ジュニアのチャンピオンとしてどこまで迫ることができるか。

大西正裕
大西正裕

1987年生まれ。順天堂大学大学院でコーチング科学、スポーツ心理学を専攻。為末大が監修する「TRAC」(http://trac.tokyo)かけっこスクールでコーチを務め、足を速くするためにエビデンスに基づく指導を行っている。JAAFジュニアコーチ、中高保健体育専修免許、講道館柔道初段。

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