鄭大世は「清水のレジェンド」になれるか 数々の浮き沈みを味わい、見いだした役割
目標のJ1残留に向け「勝ち点50」の確保を
今季はキャプテンとしてチームをけん引するチョン・テセ。クラブの最大の目標はJ1残留だ 【(C)J.LEAGUE】
キャプテンマークを巻く鄭大世(チョン・テセ)はもちろん最前線に陣取り、187センチの長身FW長谷川悠と2トップを形成した。今季の清水FW陣は鄭大世を軸に据え、チアゴ・アウベス、金子翔太らを組ませる形を取ってきたが、小林伸二監督は高さと強さを誇る2人を並べて新たなオプション構築にトライした。その成果がいきなり出て、鄭大世は長谷川、右サイドの村田和哉、左サイドのミッチェル・デュークらとの連係からゴールを量産。清水は1本目だけで5得点を挙げたが、うち4点を大黒柱の背番号9がたたき出した。
ゴールラッシュと暑さによる疲労が出た2本目はミスから3失点というまさかの展開となり、小林監督も「1本目でたくさん点を取ったし、2本目も緩めるなよと言っていたらこうなってしまった。テセもちょっと体が重そうだったし、守備ができていなかった」と苦言を呈した。
だが、練習試合での反省点は今後に向けていい薬になるはず。キャプテンの鄭大世自身も「静岡の暑さは尋常じゃないから正直きついけれど、本番になればメンタル的にも違ってくるからもっと走れる」と前向きに語っていた。清水の最大目標はJ1残留。勝ち点50の確保を目指して貪欲に戦っていくという。
欧州挑戦のチャンスを得るも、厳しい現実に直面
W杯南アフリカ大会後、ドイツ1部のケルンに移籍したものの、厳しい現実に直面した 【Getty Images】
「今季のエスパルスは守備的な戦い方をしている分、得点チャンスが非常に少ない。そういう中で7点を取れているのは評価していい。自分自身の目標はシーズン10点だったので、今のところはOKです」と鄭大世は言う。
彼がJ1でフルシーズンを戦うのは、川崎フロンターレに在籍していた09年以来、8年ぶり。「当時の自分は『這い上がってやろう』という気持ちが先に立って、エゴの強いプレーばかりしていた」と苦笑いを浮かべつつ述懐する。念願がかない、北朝鮮代表として10年のワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会に参戦。初戦・ブラジル戦での号泣、気迫あふれるパフォーマンスを含め、鮮烈な印象を残して同年夏に欧州挑戦のチャンスを得たが、ドイツ時代はままならない状況が続いた。
最初の1年半を過ごしたブンデスリーガ2部のボーフムでは通算14ゴールとある程度の結果を残したが、12年1月に移籍した1部のケルンでは厳しい現実に直面する。
「あのころも『自分が、自分が』という思いが強くて、チームプレーに徹し切れていなかった。(ストーレ・)ソルバッケン監督との関係も難しかった」と本人も振り返るように、上昇志向が強すぎるがゆえに環境への適応がスムーズにいかなかった部分があったのかもしれない。結局、ケルン加入から半年後に2部降格を強いられた時に「もう1回、2部で戦うのはしんどい」と痛感。ベンチ外が続いたこともあって、翌13年頭には韓国Kリーグ・水原三星ブルーウィングスへの移籍を決断することになった。