【ボクシング】田口良一、ライバルの前で気迫のKO劇 世界一の称号を得るため年末の統一戦へ

船橋真二郎

“相思相愛”の相手との最強決定戦

“相思相愛”のWBO王者・田中(左)との統一戦は、年末が濃厚となってきた 【赤坂直人/スポーツナビ】

 5月の田中の初防衛戦では田口がゲスト解説として名古屋に赴き、リングに招かれて対戦をアピールした。今回は逆の立場で田中が試合後のリングに上がり、さらに対決ムードは盛り上がった。

「田口選手とは間違いなく噛み合うと思うし、絶対に面白い試合になります」(田中)
「お互いに効いて、効かされて、面白い試合になる。是非期待してください」(田口)

 地元の名古屋では田口の目の前で全勝全KOの挑戦者相手に田中が存在感を示した。今度は「田口選手は前回、引き分けで評価を落としたと言っていたんですけど、評価を戻したどころか、間違いなく、このライトフライ級で最強の相手だなと思いました」と田口が田中に刺激を与えた。

 田中は9月13日に大阪で2度目の防衛戦が決まった。しかし、「俺はいつも自分が持っている最高のボクシングを出すだけ」というWBO王者は「間違いなく負けないんで、安心してください」とWBA王者に勝利を約束。お互いに対戦を熱望する“相思相愛”の2人の統一戦が実現するとすれば、年末が濃厚となる。

課題はコンディション作りか

大一番に向けてはコンディション作りが課題となってくるだろう 【赤坂直人/スポーツナビ】

「今はバレラに勝つことに集中する」と強調し続けてきた田口だが、見据えてきたのは「今年の目標」に掲げた田中との王座統一戦だった。同じ階級に4団体の世界王者が並び立つ現在、かねて「自分が世界一と胸を張って言えない」と語ってきた田口にとっては“世界一”を証明する願ってもない大舞台。同時にすでに世界2階級制覇を果たすなど、22歳の若き俊才との一戦は「勝てば、自分のボクシング人生は成功と言える」と集大成にも位置づけている。

「正直、(田中に)勝つ自信は100%とは言い切れない。でも勝つか負けるか分からない、そういう試合をクリアしてこそ」

 田口は「自分の中では圧勝ではない。キツイ試合」とバレラ戦を振り返ったが、ハイペースで飛ばし、途中でスタミナが切れたという。そこから回復し、またペースを上げられたことには「練習の成果」と評価したものの、「動きはキレキレではなかった。自分の出来としては、まあまあ」と控えめだった。

 常に田口につきまとってきた課題が試合までのコンディション調整。今回は減量に苦しみ、試合直前の控え室で「両足のふくらはぎをつりかけていた」と石原雄太トレーナーは明かしている。あらためて田口に訊くと前日から違和感があったという。田口も30歳を迎え、「疲れが抜けにくくなったり、体重が落ちづらくなってきた」と口にするようになってきた。

 特に田中戦が想定される冬は体重が落ちにくいとされる時期になる。ライバルとの対戦実現を信じて、田口はまた足もとを見つめ直す。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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