日本勢が世界を牽引するライトフライ級 田口vs.田中の統一戦機運も高まるか
主要4団体中3つの世界戦が日本で開催
ミニマム級から階級を上げ、2階級制覇に臨む田中恒成(右) 【写真は共同】
まず30日の東京・有明コロシアムではIBF世界ライトフライ級王者の八重樫東(大橋)が、翌31日の東京・大田区総合体育館ではWBA世界ライトフライ級王者の田口良一(ワタナベ)がそれぞれ防衛戦を迎え、さらに同じ31日の岐阜メモリアルセンター・で愛ドームでは前WBO世界ミニマム級王者の田中恒成(畑中)がWBO世界ライトフライ級王座決定戦に臨む。つまり3人がそろって勝利すれば、世界主要4団体のうちの3つまでを日本人が占めることになるのである。
昨年末も八重樫がミニマム級、フライ級に続き、3階級目のライトフライ級でIBF王者となり、田口がWBA王座の防衛に成功したことで、11月にWBC世界ライトフライ級王座を奪取していた木村悠(帝拳=引退)と併せ、3人の日本人王者が並立する状態になった。こうなると、どうしてもクローズアップされてくるのが王座統一戦になるのだが、実績で他の2人を大きく上回る八重樫が消極的だったことと、木村が初防衛戦で早々と王座から陥落したこともあって、機運は高まらなかった。
田口は「お互い勝ったらやろう」と提案
田口(右)は田中に「お互いに勝ったらやろう」と話している 【写真は共同】
近年のライトフライ級ではWBO王座を9度防衛していたドニー・ニエテス(フィリピン)が一歩抜けた存在だった。そのニエテスが今秋、フライ級に階級を上げ、階級ベストの称号は宙に浮いた印象がある。海外サイトが独自に定める階級別のランキングではライトフライ級での実績を考慮して、田口を1位に推すケースがほとんどだが、田口自身が「もっと評価を上げたい」と話しているようにニエテス不在後の階級ベストの証明はまだ果たされていない。
田口と田中が先鞭をつければ、八重樫も無視できなくなるかもしれないが、もちろん全員が勝たなければ、何も始まらないのは言うまでもない。各世界戦の展望と、その後の予想される動向について整理してみたい。
紆余曲折あった八重樫の対戦相手
紆余曲折あり挑戦者が決まった八重樫(左) 【写真は共同】
サマートレックは2年前の9月、当時のWBCライトフライ級王者だった井上尚弥(大橋)の初防衛戦の挑戦者として来日。4回と6回にダウンを奪われるなど、一方的な展開になったものの、11回まで粘り、最後はレフェリーストップで敗れている。好戦的なファイター型で「結局は激闘になると思う」と大橋秀行会長は予想するが、負傷明けの八重樫が掲げるテーマは「安定感」。すっかり“激闘王”の呼び名が定着した八重樫の気質を考えても、打ち合いも辞さないはずだが、出入りしながら、要所に見せ場をつくろうと考えているのではないか。
来年2月で34歳になる八重樫は「年齢を重ねてきて、試合に対する気持ちの比重がすごく大きくなってきている。ひとつひとつ丁寧にしっかり取り組んでいきたいという思いがある」と語り、残された時間は多くないという意識は強い。サマートレック戦をクリアすれば、次戦はIBFから90日以内の対戦を指示されているメリンド戦に向かうのが濃厚。この暫定王者との王座統一戦にも勝利すれば、その後はある程度、挑戦者を自由に選ぶことができる。数々の印象的なファイトを繰り広げ、ジムのみならず、日本ボクシング界への貢献度も高い功労者に対し、大橋会長が相応しい道を用意するはずである。