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山本隆弘が解説する全日本躍進の要因
「生命線」のサーブで好成績を収める
東京五輪に向け、世界選手権の出場権を獲得することは、今季最も大きな目標だった
東京五輪に向け、世界選手権の出場権を獲得することは、今季最も大きな目標だった【坂本清】

 バレーボールの全日本男子代表にとって、今季の初戦となった6月のワールドリーグ。日本はグループ2の予選ラウンドを4位で突破し、ファイナル4進出を決めた。惜しくも決勝でスロベニアに敗れたが、中垣内祐一監督、フィリップ・ブランコーチ新体制の下、チームは幸先の良いスタートを切った。


 さらに7月に行われた世界選手権アジア予選では、4戦全勝で2大会ぶりとなる世界選手権への切符を手にするなど、全日本男子が躍進を遂げている。2つの大会で好成績を収めることができた理由はどこにあるのか――。元全日本代表で、自らも数々の世界大会で活躍した山本隆弘さんに、その要因を解説してもらった。

サーブで「攻める」意識が高まった日本

ブランコーチ就任後、日本はサーブで「攻める」意識が高まった
ブランコーチ就任後、日本はサーブで「攻める」意識が高まった【坂本清】

 2020年の東京五輪に向け、18年にイタリアとブルガリアで開催される世界選手権の出場権を獲得することは全日本男子にとって、今季最も大きな目標でした。


 負けたら終わり。そんなプレッシャーが伴う中、開幕戦のチャイニーズタイペイとの試合は硬さも目立ちましたが、やるべきことをやって勝ち切れたこと。出場権が懸かった最終戦でアウェーの中、ホームのオーストラリアに勝利して1位通過を決めたことは、大きな1つの成果と言えるのではないでしょうか。


 世界選手権アジア予選、そしてその前に開催されたワールドリーグでも日本が好成績を収めた1つの要素はサーブです。


 柳田将洋選手のジャンプサーブのように、直接ポイントを取るビッグサーブももちろんですが、大きかったのはジャンプフローターサーブの効果が上がったことでした。特に李博選手、山内晶大選手の両ミドルと、アジア予選ではオポジットも務めた出耒田敬選手のジャンプフローターサーブは、すべての試合で高い効果を発揮しました。


 特に山内選手と出耒田選手は、これまでは下から上に打ち上げるようなサーブを打っていましたが、これは相手からすれば、ふわっとした軌道で来るため、さほど脅威ではありませんでした。いくら柳田選手のように攻撃的なサーブを打つ選手がいても、チーム全体に「サーブで攻める」姿勢が浸透しなければ、チームにとっての武器にはなりません。


 しかし、ブランコーチが就任したことで、選手の意識も変わりました。その中でも、特に変化が見られたのが山内選手と出耒田選手。高い打点でボールを捉え、上から下にたたきつけるような世界基準のサーブを打つようになり、間違いなく「攻める」意識が高まった。その1つの成果が、アジア予選で発揮されたのではないでしょうか。


 15年に日本が5勝を挙げ6位に入ったワールドカップでも、勝利するためにはサーブで攻めることは絶対条件だと選手に強く意識が植え付けられました。そして、昨季のV・プレミアリーグを制した東レアローズが、ジャンプフローターサーブを強化する策を採り、頂点に立ったことで、さらにサーブの重要性が実感できた。それは日本でも、世界でも「勝つためにはサーブが生命線だ」という証明でもあるのです。

初選出のセッター・藤井がもたらした効果

全日本初選出の藤井。バランス良く攻撃を展開した
全日本初選出の藤井。バランス良く攻撃を展開した【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 攻撃面において、好調を維持する1つの要素がセッターの藤井直伸選手です。


 どんな状況でもミドルからの攻撃を多用するタイプのセッターなので、相手も常に「ミドルがある」と意識します。これまでは20点以降になると、日本の攻撃時は相手のブロックがサイドに寄っていることも少なくなかったのですが、藤井選手がゲームの序盤、中盤に関わらず、どんな場面でも使える時は常にミドルを使うため、相手のミドルブロッカー(MB)は一度真ん中を見てから左右に移動しなければならず、ワンテンポ遅れていました。


 そうなると、石川祐希選手や柳田選手など、サイドの選手が2枚以上のブロックと対峙(たいじ)することが減り、スパイカーが優位な状況で攻撃を展開できるようになりました。


 前衛の両サイドからの攻撃だけでなく、クイックとバックアタックも加えた複数の攻撃が同時に助走して入ってくることに加え、実際に万遍(まんべん)なく、さまざまな場所にトスが上がる。そうなれば相手のブロックは的が絞りにくくなり、日本は常に優位な状況で攻め続けることができるようになります。


 ワールドリーグでは好調だった柳田選手がアジア予選ではやや不調でしたが、ワールドリーグは本調子でなかった石川選手がしっかり調整して、大事なオーストラリア戦でベストパフォーマンスを発揮しました。これも藤井選手がスパイカー陣の調子を見極めながら、バランス良く攻撃を展開したために生じるプラスの効果と言えるでしょう。


 何より、これが全日本初選出の藤井選手にとって、もし自分が崩れた時には深津英臣選手がバックアップにいる、というのも強みであるのは間違いないはずです。深津選手や米山裕太選手のように、これまで何度も悔しさを味わってきたベテランがチームにいてくれるというのは非常に心強く、それもまた、チームがうまく回っている1つの要素と言えるのではないでしょうか。

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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